米国が国際戦略の重心を東に移す中、中国の知識界には米国に聞こえの良い言葉も聞かれるが、覆い隠せない厳しい事実は米国がはばかることなく中国を米国の主要な戦略的ライバルとして位置付けていることだ。今米軍は大挙してアジア太平洋に迫り、通常の軍事パフォーマンスではなく、中国を潜在的ライバルから現実的ライバルとし、ソフトによる防備からハードによる封じ込め、概念構想から実戦配備に移行している。米国は毎年のように戦争を繰り返し、国力や覇権が衰退する情況にあって、全面的攻めから重点的攻めへの移行は確かに最後の手段ともいえる。この一歩は実体が多く虚構が少ない。
米国のアジア太平洋戦略は次の6つの方面から全力で中国を敵とする戦略的抑止体制を築くことに重点がある。(1)中国を主要な作戦対象、西太平洋を主要戦場、空海軍を主要柵戦力とする「空海一体戦」戦役作戦体制。(2)日本と豪州を南北の2大戦略支点とする軍事同盟体制。(3)西太平洋の列島線を拠り所とする軍事基地体制。(4)西側の価値観を中核とする政治浸透体制。(5)環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を拠り所として中国を排斥・圧制し、米国の経済主導権を確立する経済抑制体制。(6)中国と周辺国の友好関係を引き裂き挑発するいわゆる「前方配備外交」体制――。
米国の戦略的な東への重心移行には次の2つの目的がある。まず、中国に対していつでもすぐに軍事干渉を実施できる強大な能力を保持し、中国に対する軍事的、高圧的態度を保持し、圧力によって変化や混乱を促すこと。一旦時機が熟せば、即刻手を出し、中国内部の「第5縦隊」とともに内外呼応し、中国を打倒し、米国の覇権的地位に脅威となる可能性のある最大の戦略的ライバルを排除する。これは米国がもっとも望んでいる、代償が少なく、効果大の理想パターンだ。2つ目の、もっとも直接的な目的はいわゆる「中国脅威」の雰囲気を作り出し、アジア太平洋諸国を拘束してアジア太平洋地域の中米間にある広大な中間地帯へのコントロールを強化し、特に北東アジアの日本、韓国などの同盟国の心が離れつつある傾向を食い止め、米国の権力の失墜を防ぐことにある。また、南アジア、東南アジアでさらに勢力範囲を拡大し、アジア太平洋地域の指導的地位を固め、米国のアジア太平洋における長期的制覇を確保するためでもある。
米国の一挙一動をすべて陰謀と考えるべきではないという声もある。確かに米国の東への重心移動は中国を的にしているため、陰謀ではなく陽謀で、米国の「西洋化・分裂化」国策の最も新しい表現といえる。これは冷戦後、米国最大の戦略的構造調整で、国際戦略構造の重大な変化であり、中国の安全保障や発展にこれまでにない挑戦が立ちはだかるのは間違いない。この挑戦に我々は決して無関心であってはならない。無責任なでたらめを信じ、自らを欺き、米国の画策の前に武装解除してはならない。(作者:軍事戦略問題専門家 彭光謙氏)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2012年2月10日