第2回核安全保障サミットが韓国のソウルで開かれ、中国や韓国、米国、日本、ロシア、インド、インドネシア、フランス、国連、欧州連合(EU)など世界53カ国と4国際機関の首脳級が一堂に会し、世界の核安全保障をめぐり協議した。議長を務める韓国の李明博大統領はサミットの趣旨として、「核兵器のない世界」づくりを目指して、核の削減や核物質の管理強化に努めることを掲げている。中国共産党の機関紙、人民日報(海外版)が伝えた。
微妙な時期に開かれた今回のサミットは、いつにも増して注目を集めている。東京電力福島第1原子力発電所の事故を受け、日本をはじめとする各国で原子力反対の声が高まっており、朝鮮半島をめぐる情勢も先行きが不透明な状態だ。米国や英国のメディアは、オバマ米大統領が今回開催される関連会議で、朝鮮の衛星打ち上げ計画について言及すると報じている。
2年前に米ワシントンで開催された第1回サミット以降、核安全保障に対する国際社会の関心が日増しに高まる中、関連分野での国際協力は新たな段階を迎えており、核物質や原子力施設の安全水準はある程度向上している。しかし原子力の実用化に伴い、核物質の拡散や流出のリスクも高まっており、テロリストや国際犯罪組織に付け込むすきを与えている。こうした中、核安全保障体制の強化や原発テロ防止策、核物質と原子力施設の管理強化が、深刻な課題となっている。これを踏まえ、国際社会は以下3つの面で努力するべきだ。
(1)国際協力を強化し、原発テロ対策に取り組む
冷戦後、原子力技術と核物質の拡散により、非国家行為者が核兵器の製造技術や核物質を手にする確率が大きく高まった。兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)専門家会合の報告書によると、2010年の時点で、全世界には核兵器12万6000個分の高濃縮ウラン(HEU)1600トンと プルトニウム500トンがある。一方、民用の高濃縮ウランも備蓄量の多さや管理の不備などの問題を抱えている。こうした核物質がテロリストの手に落ちれば、悲惨な結果が待ち受けている。核物質と放射性物質の違法売買や密輸の取り締まりで協力を強化することが求められている。
(2)核安全保障と原子力の平和利用の関係をうまく取り持つ
原子力の開発と利用は20世紀の人類の最も偉大な発明であり、人類社会を大きく発展・進歩させた。一方、核拡散を取り巻く情勢はなおも深刻で、とりわけ地域的な核拡散問題が相次ぎ、情勢を複雑化させている。福島第1原発の事故による影響は、世界各国に波及している。原子力の完全な平和利用という全人類の目標を実現するためには、国際協力が必要不可欠だ。
(3)核兵器のない世界づくりに向けて政治的な溝を埋める
核兵器のない世界は、現時点ではまだ実現不可能な理想でしかない。現在、国際社会ができることは核兵器に対する依存を減らすことだ。国家間の政治的対立と地域情勢の緊張を緩和し、核兵器の先制使用や核による威嚇をしないと宣言して初めて、核兵器の存在価値を減少ひいては無にし、核保有国に核を放棄させることができる。そうしなければ、核抑止力を強化するしか方法はなく、核不拡散に向けた取り組みはさらに難しさを増すことになる。
中国の胡錦濤国家主席は同サミットで、核安全保障分野における中国の政策的立場や重要な取り組みについて述べるという。中国は原子力大国として、核安全保障を一貫して重視しており、自身の核安全保障力を高めると同時に、核不拡散やテロ対策などに向けた国際協力にも積極的に取り組んでいるほか、発展途上国に安全保障面での支援も行っている。2010年に米ワシントンで開催された前回サミット以降、中国の核安全保障に関する基準づくりは新たな進展がみられた。中国は今後も原子力エネルギーと経済の持続可能な発展を推し進め、世界の平和と安全を促進することで、核安全保障体制の強化に貢献していくだろう。(筆者 雑誌「国際問題研究」編集長 阮宗澤)
「人民網日本語版」2012年3月27日