4月26日から5月4日にかけて、李克強・国務院副総理がロシア、ハンガリー、ベルギーの3カ国を訪問する。ベルギーではEU本部にも訪れる予定だ。ユーラシア大陸を横切り、旧東側から旧西側の国へと周る今回の訪問はたいへん意味深長なことだと言える。
訪問先となる国の中には、冷戦時代、東側陣営(共産圏)に組み込まれていた地域に位置するロシア、欧米文化の中心であるEU加盟国、東西の文化が交わるハンガリーがある。中国要人によるこの度の訪問は、国際秩序が多極化へと移行している今、中国の外交政策が「東側」のみならず、「西側」にも注力してきたことを世界に示しているようにも見える。
いわゆる「東側」「西側」とは、米ソ冷戦時代の概念に基づくものである。従来、ユーラシア大陸は文化的な違いにより東と西に区分されていたが、それにイデオロギー的な要素が加わり、世界を第1世界(西側諸国)、第2世界(東側諸国)に分けたものがこれに当たる。この10年、中国やロシアなどの新興国の台頭、日米欧などの先進諸国の景気後退など、世界情勢は大きく変わってきている。こうした背景において、中国とロシアが如何に関係を強化していくかが、多極化していく世界秩序の中で重要な要素となっている。
中国の外交は、イデオロギーにより左右された時代はとっくに終わっており、今は戦略性を備えたバランス外交が主体となっている。イデオロギー的な束縛から解き放たれた現在の中国の外交は、他派を容認し、友好国を増やそうとするものである。こうした戦略的思考は、昔の中国と比べると、自由で自立した外交を推進させることにつながっている。世界経済のリーター的存在である欧米諸国との関係強化につとめると同時に、発展途上国やアジア諸国との友好関係も保っている。