米ソ冷戦時代が終わり、「東西対立」が下火になると、今度は先進国と発展途上国の対立という南北問題の存在が世界的に重視されるようになった。中でも、イスラム原理主義派と欧米諸国の対立の激しさは著しい。だが、欧米諸国の景気後退、国際的な構造的不平等の拡大、「欧米社会vs非欧米社会」や「先進国vs新興国」の「新・東西対立」に憂える世界は、中国にとって、重大な役どころを演じられる舞台となるはずである。
中国は複数の顔を持つ国である。地理的にアジア文化の特質を持ち、発展途上国の代表国でありながら、経済面では欧米諸国と強い関係を築いている。中国政府要人によるこの度の訪問には、ロシアを代表する新興国とEU加盟国を代表とする欧米諸国への敬意が示されている。これは、複数の顔を持つ中国だからこそ出来ることであり、また、中国政府の戦略的思考の大きさを表している。
現在、中国と欧米の主要諸国の経済面での連携は充分な成果を上げている。次になすべきは、双方による戦略対話の場を多く持ち、猜疑や疑惑を失くしていくことである。中国は今、日米欧以外の国、特にロシアなどの新興国との「南南経済協力(発展途上国間の相互協力)」を推し進めている。経済面だけでなく、国際金融システム改革、気候変動などといった世界的な課題にも共に取り組んでいく予定だ。双方面との関係強化を築く、こうしたバランス外交は、これまで長い間欠落していた中国外交の手段として、今後注力されることになるだろう。(文=中国人民大学国際関係学院 金燦栄副院長)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2012年4月23日