こうした背景の下、一段と注目されるのが米国の「アジア太平洋回帰」だ。今年1月に米国防総省が発表した新国防戦略報告は、戦略の重心のアジア太平洋へのシフトを柱としている。米国のこの戦略調整によって、元々複雑だった東アジア地域の安全保障情勢は激化。「中国は強大化すれば必ず覇権を唱える」「米国は中国の台頭を抑え込もうとしている」「アジア太平洋の小国は米国を頼みに中国を牽制する」といった論調が飛び交った。特に現在、フィリピンは米国を頼みにできると思いみ、中国領の黄岩島を自国領と妄言し、この紛争の国際問題化まで計画している。この複雑性が中米両国、両軍関係に新たな試練を突きつけている。
中米関係において、経済・貿易関係はどんどん緊密化しているが、安全保障戦略面の相互信頼は日増しに高まるどころか「マイナス状態」を呈しているとの指摘がある。だがこれはフィリピンなどの国にアジア太平洋で暴れる機会があることを意味するものではない。実際には、黄岩島事件においてASEAN諸国の中にフィリピンの側に立とうとする国はなく、米国にいたっては中立の立場を表明している。
太平洋には中国、米国、そしてもっと多くの国々を収容するに十分な広さがある。中米両国・両軍が平等と相互尊重を基礎に、共通の認識と利益を拡大し、摩擦や猜疑を減らし、対話を通じて戦略上の誤った判断を取り除き、手を取り肩を並べて、地域の平和・安定・繁栄のために大国としての責任を担うことは、歴史の大勢である。中米が互いに謝った判断をしないだけで、アジア太平洋地域の長期的な平和と安定は可能となる。パネッタ米国防長官が述べたように、中米両国は全ての問題において立場が一致しているわけではないが、双方間に誤解が生じて危機を招くことは両軍間の対話によって回避できる。アジア太平洋地域と両国の将来の安全は、積極的、協力的、包括的な両国関係を強く必要としている。
「人民網日本語版」2012年5月10日