タイ内閣は26日の閣議で、ウタパオ軍用空港を「気象研究」のために使用したいとの米航空宇宙局(NASA)の借用申請について協議した。閣議は決定は出さず、各界からの懸念を払拭するために議会での審議に回す方針のみを示した。
この計画についてタイ内閣は科学研究機関間の協力との立場を堅持している。タイ憲法では内閣に決定権があり、議会の承認を経る必要はないため、議会で採決が行われることはない。これについてタイのある民間団体は「政府の行動は計画の詳細の公開を迫る圧力を和らげ、後の法的紛糾を回避するためのものだ。時機が熟せば政府は必ず米国との協力を承認する」と指摘した。
米国もこれまでの強硬姿勢を改め、タイの法的手続きの完了を辛抱強く待つ意向を表明している。米国の駐タイ大使は「空港借用の承認は6月末になっても遅くない。たとえ来年再交渉することになっても断念しない」と表明した。軍用空港借用への米国の執着が垣間見える。
米国のウタパオ軍用空港借用について外部は中国の台頭の牽制、東南アジア諸国との軍事協力の強化と関係があるとの見方を次々に示している。タイのアピシット前首相は「米国は現在アジア太平洋回帰戦略を推し進めている。タイの空港を米国が使用する計画は周辺国に懸念を引き起こす恐れがある」と指摘した。タイの英字紙「The Nation」は「安全保障上の潜在的なリスクを多くの国が懸念している。プロジェクトの行動範囲をアジアの大部分、さらにはロシアの一部地域にまで拡大し、収集した情報を衛星を通じてアジア太平洋地域の米軍の基地や軍艦に送信することができるからだ」と指摘した。
■低予算で軍事網拡大を図る