文=朱 建栄
「1998年のアジア通貨危機を経て中国はアジアの金融大国になり、2008年の国際金融危機を経て世界的な金融大国にもなった」との評価がある(関志雄・野村資本市場研究所シニア研究員)。逆風の中で、西側の常識を超えた中国の高成長が持続する秘密は何か、それを探るには、経済面だけでなく、中国の政治システムとの関係も検討する必要があろう。
中国の社会主義政治体制は「独裁」「非民主主義的」と決めつける偏見を排除して客観的に見れば、その歴史的背景と文化、発展段階の中で育んだ合理的なものというべきだ。各国の政治体制とも一長一短があり、自称世界最大の民主主義国家のインドは、人間が生まれて不平等に扱われるカースト制度をいまだに解消できないし、米国では最近、「1%の人間は99%の富を独占」を批判する「ウォールストリートを占拠せよ」という大衆運動が勃発した。何よりも、この30年の間に中国は世界的な経済大国に躍進し、四億人以上人口の貧困問題を解決し、さらに社会の自由、政治民主化の大幅な進展をもたらしたことは、ほかのあらゆる政治体制でも実現できない進歩である。
中国の躍進に関する政治面の背景要因に興味をもつ政治学者として筆者は、鄧小平時代に決定された21世紀半ばごろまでの3段階発展戦略の実施を、政治の継続性をもって保障する、という特徴を特に注目している。幹部の年齢制限と任期制制度によって人事の安定的、継続性ある交替を実現しただけでなく、5年1期の党大会で発展戦略に対する政治面の再確認を行い、毎年の全人代では政策実施面の微調整を行うという「戦略と戦術の関係」をうまく処理するメカニズムが構築されたこと、更に、地方役人の抜擢基準において20年前は「地方GDPをどれぐらい延ばし、外資をどれぐらい導入したか」が主要な指標だったが、今は「市民の幸福度指数」「環境・緑化基準」などの達成に変えられ、指導部は「幹部選抜基準」(政績考核)の定期的調整をもって戦略的方針に対する人事的、実施面の保証も確保している。