「経済の基盤は上部構造を決定する」というマルクス主義の基本的原理に沿って、中国は経済の現代化、国民生活の向上、社会の安定を優先としつつ、その進展度合いに応じて政治改革を推進する、という堅実な民主化プロセスを導入したことも、もう一つの「中国特色」として重視されるべきだ。21世紀に入って「党内民主化」と「基層民主化」という2方向の政治改革が推進されてきた。第18回党大会を前に、今年7月後半に開かれた省部級幹部研修班の開業式で胡錦濤主席は、「我々は常に政治体制改革を改革と発展の全局における重要な位置に置き」、「法に依って民主的選挙、民衆的政策決定、民主的な管理、民主的な監督を実施し、社会の公平と正義、人民が広範な権利と自由を享受することを保障する」ことを強調した。これは今回の党大会では「法治国家の建設」「民主化の具体的実施」がキーワードとなり、今後の政治改革が取り組む重点的方向を示すものと見られる。
近年の中国では抗議運動、ストライキなどが多発しており、政治と社会の混乱を懸念する声もあるが、筆者はそれを経済と社会の発展に伴って民衆の権利意識が台頭する社会が進歩する現象と捉える。それに対して中国共産党は民意をくみ上げ、法治国家作りという枠内で、法律面、政策面、人事面における問題に果敢に取り組んでいく決意を示した。その意味で、今後の10年間、中国は上と下が連動し、政治・社会・経済という三つ巴の改革が全面的に推進されるダイナミックな時代を迎えると期待できよう。(作者は東洋学園大学人文学部教授。)
「人民中国」より 2012年8月10日