日本で29日、第181回臨時国会が開催された。野田佳彦首相は衆院本会議で所信表明演説した際、経済再興を内閣最大の課題とし、「日本再生戦略」を柱とする経済政策を実施することを表明、「明日への責任」を強調し、短い演説の中で20回も繰り返した。
野田首相は「明日への責任」という言葉に特別な思いがある。グーグルで「明日への責任」と「野田首相」というキーワードを日本語で入力すると、23000件の検索結果が表示、それに相応する英語のキーワードを入力してみても1400件以上の検索結果が表示されることからも、野田首相のこの演説にどれだけ注目が集まっているかが伺える。
野田首相は第67回国連総会で、「明日への責任」をテーマに、日本の内政と外交政策について説明、「人類の3つの叡智」に言及した。第一の叡智は、「今」だけではなく,「未来」を慮(おもんばか)る能力。第二の叡智は、私たちが住む地球を俯瞰(ふかん)するという視点。第三の叡智は、互いの間の紛争をルールに基づいて理性的に処理するという作法。野田首相は「明日への責任を共に果たそう」と各国に呼びかけた。
「明日への責任」を論じる上では戦略的視点と戦略的抱負が示されているが、国内政治や国際政治の舞台の実際と照らし合わせると、野田首相の「明日への責任」は有名無実の感がある。国内では、「明日への責任」を果たそう、中途半端ではいけないと叫びながら、実際にはそれを首相の地位と民主党の与党の地位を守る言い逃れにし、国会解散と選挙を先延ばしにしている。国際的には、歴史問題や地域の安全保障、領土問題をめぐる処理で、「人類の3つの叡智」などみられない。こうした状況にあって、「明日への責任」を論じるのは表面的な嫌いがある。野田首相は上述の演説で、周辺海域の警備体制を強化し、「領土・領海を守ることでは譲歩しない」と宣言し、領有権争いをめぐる強気の本音を明らかにした。