(三)多元的な紛争解決のしくみを確立する
社会の急速な発展期で社会矛盾や紛争が多発している状況に対応するため、中国の立法機関は2010年、『中華人民共和国人民調停法』を公布し、関係部門は訴訟・非訟の連携による矛盾・紛争解決のしくみを確立、健全化し、矛盾・紛争の大調停(人民調停・行政調停・司法調停の連携)をさらに推進し、国情にふさわしい多元的な紛争解決のしくみを構築した。2012年改正の民事訴訟法には先行調停、調停協議の司法確認などの内容が加えられ、司法改革の成果は確固としたものになった。 人民調停の役割を発揮させる。人民調停は中国の特色ある裁判外紛争解決の手段である。中国は全国の村(住民)委員会、郷・鎮(街道)、企業・事業体、および矛盾の多発する業種や分野において広く人民調停委員会を設置している。2011年末現在、中国には人民調停組織が81万1000ヵ所あり、433万6000人の調停員がいる。2011年には893万5000件の紛争を調停し、調停の成功率は96.9%に達している。 行政調停の役割を発揮させる。行政機関は法律の定めに基づき、当事者の自由意思を前提として、職権の管轄範囲内の行政紛争および職権関係の民事紛争の調停に積極的に取り組み、平等な話し合いによって合意に至らしめ、矛盾・紛争の速やかかつ合理的な解決を促している。 司法調停の役割を発揮させる。人民法院は受理した民事案件に対して、職権に基づくか当事者の申し立てで、裁判官の司会のもとで調停を行い、紛争を解消している。2011年、全国の法院で調停された民事案件は266万5000件、調停を経て訴訟が取り下げられた案件は174万6000件であった。人民検察院は検察機関と人民調停組織の協力のしくみを確立、健全化しており、条件にかなった軽微な刑事案件、民事申立案件の場合、まず人民調停組織が調停を行い、それから検察機関が調停の状況に応じて法律による決定を下し、協力して矛盾・紛争を解消している。 訴訟・非訟の連携による矛盾・紛争解決のしくみ確立に力を入れる。人民調停組織、社会団体、弁護士、専門家、仲裁機構などの役割を発揮させることを重視し、人民調停、行政調停、司法調停を結びつけた「大調停」システムの構築に力を入れ、三者間で手続きの結合、効力の確認、法律指導などの面で調整・協力を強化している。仲裁などの裁判外紛争解決手続きに対して、人民法院はその独自法則を尊重し、証拠保全や財産保全、強制執行などの面で法律に基づく支持を与えている。 当事者が和解に達した公訴案件の訴訟手続きを整備する。民間紛争から生じた軽微な故意の犯罪や、汚職犯罪を除く懲役7年以下の判決の可能性がある過失犯罪案件について、被疑者、被告人が心から悔悟し、被害者への損失賠償や謝罪などの手段によって被害者の許しを受け、被害者が和解する意向を持つ場合、当事者双方は和解することができる。和解の合意に達した案件について、人民検察院は人民法院に寛大な処罰の意見を提起することができ、犯罪の経緯が軽微で刑罰に処する必要がない案件の場合、起訴しないという決定を下すことができる。人民法院は法律に基づき被告人を寛大に処罰することができる。