米国は10年前にイラク戦争を発動した。その後10年間で米国のイメージは損なわれ、経済は下降した。中国は急速な発展を維持して世界の舞台の中央に到達し、世界第2の経済大国となった。この両大国の境遇の差を歴史学者がどのような筆致で描写するかは想像に難くない。
イラク戦争と中国の発展に本来因果関係はないが、米国の一部の学者は両者間の結びつきを熱心に探している。彼らにはジョージ・W・ブッシュ政権が中東に力を投じすぎたために、米国は中国の台頭を軽視したのだと映る。そしてオバマ政権の「アジア太平洋回帰」戦略を、ブッシュ政権時のこの戦略ミスを正すものと見なしている。
太平洋両岸のかくも重要な両大国の戦略面の相互作用に注目することは、過去と未来の世界情勢の変化を把握するうえでプラスだ。だがそれ以上に明確に認識する必要があるのは、中国には自らの発展の道があり、米国の戦略の暗い影の下で生存したことはこれまでないということだ。中国の発展の戦略的チャンス期は米国に与えられたものではないし、何らかの隙に乗じてつかみ取ったものでもない。
米同時多発テロ発生前、ブッシュ政権は中国抑え込みの衝動を確かに強めようとしたことがあり、特に台湾問題について「はっきりさせる」意向を一度明確に表明した。これは当時中米関係に深刻な悪影響をもたらし、中米関係の展望に一段と暗い影を落とした。
中国は平和的発展の道をとっくに歩み出している。近代以降に受けた戦乱と貧困の痛ましい経験から中国人民は平和の貴さと発展の切迫性を深く感じ、自国の平和的発展を堅持すると同時に、世界の平和の維持に尽力し、各国の共同発展・繁栄を積極的に促してきた。平和的発展の道は中国人民が見出した、中国の国情と時代の要請に合致した発展の道だ。便宜上の措置では当初からなく、外部の力によって左右されることはあり得ない。