前書き
今の時代、平和と発展は新たなチャンスと挑戦に直面している。チャンスをしっかり捉え、ともに挑戦に立ち向かい、協力して安全を守り、手を携えて発展を実現することは、時代が各国人民に与えた歴史的使命である。
平和的発展の道を歩むことは、中国の確固たる国家意志であり、戦略的選択である。中国は終始変わることなく独立自主の平和外交政策と防御的国防政策を励行し、さまざまな形の覇権主義と強権政治に反対し、他国の内政に干渉せず、永遠に覇権を争わず、永遠に覇をとなえず、永遠に軍事拡張を行わない。中国は、相互信頼・互恵・平等・協力の新たな安全保障観を提唱し、総合的な安全保障、共同の安全保障、協力による安全保障の実現を追求する。
中国の国際的地位にふさわしく、国の安全と発展の利益に適う国防強化と強大な軍隊の建設は、中国の現代化建設の戦略的任務であるとともに、中国が平和的発展を実現するための強固な保障でもある。中国の武装力は国の発展戦略や安全保障戦略の新たな要請にこたえ、科学的発展観の指導思想としての地位を堅持し、戦闘力生成モデルの転換を加速し、中国の特色ある現代的軍事力の体系を構築し、時代の変化に即応して軍事戦略指導を強化し、武装力の運用方式を広げ、国の発展のために安全保障と戦略的サポートを提供し、世界平和と地域の安定を守るためにしかるべき貢献を行っていく。
一、新たな形勢、新たな挑戦、新たな使命
21世紀に入り、世界には深刻かつ複雑な変化が生じているが、平和と発展が時代のテーマであることに変わりはない。経済のグローバル化、世界の多極化がすみずみまで広がり、文化の多様化、社会の情報化がさらに進み、国際的なパワーバランスは世界の平和維持に有利な方向に向かい、国際情勢は総体として平和、安定という基本的な態勢を保っている。と同時に、世界は依然として不安定でもあり、覇権主義、強権政治、新たな干渉主義などが頭をもたげており、局地的な激動やホットスポットをめぐる衝突が頻々と生じている。伝統的脅威、および非伝統的脅威が混在して相互に作用しあい、国際軍事分野での競争はさらに激化してきており、国際安全保障問題における突発性、相互関連性、総合性が顕在化してきた。アジア太平洋地域はますます世界の経済発展と大国の戦略ゲームの重要な舞台となり、米国はアジア太平洋地域の安全保障戦略を調整し、地域的枠組みに重大な調整が加えられた。
中国は発展の貴重な戦略的チャンスの時期をしっかりとらえて活かし、現代化建設でめざましい成果をあげ、総合国力が大幅に躍進し、人民の生活は明らかに改善し、社会の大局は安定を保ち、両岸関係は引き続き平和的発展の勢いを呈し、国際競争力と影響力は絶えず向上している。とはいえ、中国は依然として多元的で複雑な安全上の脅威と挑戦に直面しており、生存のための安全保障と発展のための安全保障、伝統的脅威と非伝統的脅威が相互にからまりあう中で、国家の統一を守り、領土を保全し、発展の利益を守ることはきわめて困難で重い任務である。一部の国はアジア太平洋地域での軍事同盟を深化し、軍事プレゼンスを拡大し、しばしば地域の緊張状態をつくり出している。一部の隣国は中国の領土主権や海洋権益にかかわる問題で、それを複雑化、拡大化する動きに出ており、日本は釣魚島問題で紛争を引き起こしている。テロリズム、分裂主義、過激主義の「3つの勢力」の脅威が高まっている。「台湾独立」の分裂勢力およびその分裂活動は依然として両岸関係の平和的発展にとって最大の脅威となっている。また、重大な自然災害や事故、公共衛生事件の頻発など、社会の調和と安定を妨げる要素が増え、国の海外利益の安全リスクが高まっている。機械化戦争の形態は情報化戦争の形態へと速やかに移行しており、主要国は、宇宙空間やサイバー空間といった国際競争における戦略的制高点を制するため、軍事ハイテク技術の発展に力を注いでいる。