第5回中米戦略経済対話が先週閉幕した。今回の対話も世界の注目を浴びた。両国政府の新体制発足後初の対話だったほか、対話前に「スノーデン事件」が降ってわいたことで、双方はより対等かつ真剣にサイバー対話を行なうこととなった。だがわれわれは、今回の対話には1つの重要な議題が欠けていたことにも注意を払っている。すなわち環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に関する交渉だ。(文:傅夢孜・中国現代国際関係研究院副院長。環球時報掲載)
中米戦略経済対話は本来、戦略性、全局性、長期性を備える二国間または多国間の問題について協議を行なうものだ。だが今回双方が意図的または無意識に軽視したのがTPPだ。報道によるとバイデン米副大統領は10日の演説で「国際貿易の準則制定に参加したいとの中国の気持ちは理解する。だが中国は国際的な責任や義務の履行に対して慎重な姿勢でいる」と述べた。中国は最近、TPPへの関心をはっきりと示したが、バイデン副大統領は中国のTPP参加は非現実的との姿勢を示したのだ。
TPPはオバマ政権が最も重視する貿易政策イニシアティブだ。ドーハ・ラウンドが停滞しているため、TPPが実現すれば、将来の多角的貿易自由化を推進する原動力を世界貿易機関(WTO)に与え、アジア太平洋経済のメカニズムを形作る役割さえ発揮しうる。米国は現在環大西洋貿易投資パートナーシップ協定(TTIP)と北米自由貿易圏の深化と推進に取り組んでおり、その「一体両翼」の世界経済貿易戦略がぼんやりと形を整えつつある。TPP、TTIPのいかなる拡大または複製も、もう1つのWTOであり、将来の世界経済・貿易のルールを決める新たなプラットフォームとなることは間違いない。
理屈から言えば、環太平洋経済貿易統合協定である以上、中国を欠くべきではないし、排除すべきではなおさらにない。だが中国がひっそりと脇に追いやられていることを、大多数の中国人は全く知らないだろう。後に米側の姿勢はいくらか和らいだものの、国有企業、労働者、環境保護基準、知的財産権、政府調達に関してTPPの設けている高い敷居が、中国を念頭に置いたものであることは見識のある人なら一目で分かる。米側がTPPを推進しながら中国を排除するのは、対中経済戦略に変化が起きていること、つまり長期間堅持してきた中国を国際秩序に融け込ませる既定の戦略に変化が起きていることを意味するのだろうか?