インターネットというツールを国際金融市場と比較してみるとよい。両者は共に潜在的に、大きなプラス作用を備えると同時に、人類の社会および秩序に対して壊滅的な殺傷力を持ってもいる。ノーベル経済学賞受賞者のジェームズ・トービンは「世界が依然主権国家に分かれている限り、国際金融取引の車輪に砂を投げ込み、その回転をそれほどスムーズでなくするほうが、かえってプラスになるだろう」と語った。同様に、世界が依然主権国家に分かれている限り、ネット情報の殺傷力がすでに余すところなく示された状況では、情報防御技術の運用によってこれが自由に氾濫しないようにする方が、結果的に人類社会全体にとってより公平で、プラスなのだ。
1997-1998年の壊滅的なアジア通貨危機を身をもって経験した者は、マレーシアと香港特区が「資本の自由化」の掟を無視して資本規制と市場介入を毅然と実施したことで、他の多くの東アジア諸国が陥った破滅的後退を免れたことを目の当たりにし、「資本の自由化」を引き続き不可侵の掟と見なすことはできないことを冷汗と共に感じた。同様にファイアウォールには何の罪もなく、必要なツールと見なすほかないのだ。堂々たる大国の政府は、万事いわゆる「ネット世論」の顔色をうかがって事を行うわけにはいかない。さもなくば余程自らの考えのない、脆弱な国ということになる。
いつの日かファイアウォールの役割が徐々に弱まり、最終的にインターネット管理がフェード・アウトする可能性は否定しない。だがそれは総合国力の増強に基づく社会発展と国家の政治的自信の高まりの結果としてのもの、中国と米国覇権主義の国力バランスがより均衡になった結果としてのもの以外にあり得ない。人為的な「急いては事をし損じる」の結果であってはならない。かつ、たとえ資本自由化後でも必要時には再実施できる資本規制と同様のものである。上海自由貿易区は大きな希望と前途のある経済特区だ。われわれは上海自由貿易区が全国の経済発展に貢献することを希望する。各政治勢力の角逐する闘技場、政治闘争の犠牲になり果てることは断じて望まない。(編集NA)
「人民網日本語版」2013年9月29日