次に、安倍首相の同構想は、歴史的・現実的な支柱がなく、提唱は容易だが実行に移すことは難しい。日本とイスタンブールの間には海の隔たりが存在し、陸路と連結できない。またトルコのユルドゥルム運輸相によると、この「新シルクロード」は鉄道により、アジア・ヨーロッパ間の重要な貿易動脈を結び付けなければならない。つまり「新シルクロード」はアジアと欧州を陸上で結ぶ貿易ルートであるが、日本は島国でアジア大陸と結びついていない。それにも関わらず、いかにしてアジアと欧州をつなぐ現代のシルクロードを主導するというのだろうか。
それから、安倍首相の同構想の根本的な目的は、中国の発展のけん制だ。これは中国の推進する「新シルクロード経済ベルト」の構想と本質的に異なっており、トルコ自身の戦略的構想からも外れている。
日本のトルコへの働きかけは、単なる「片思い」に過ぎない可能性がある。トルコの最大の外交目標はEUへの加盟だ。その道は険しいが、トルコはこの目標を諦めていない。今回のボスポラス海峡トンネル開通も、EUとの距離を近づけるためである。しかし日本はトルコを中国けん制の陣営に巻き込もうとしており、トルコの外交目標にもとるものだ。このまったく異なる考え方は、日本の意図を空振りに終わらせるだけだ。(筆者:厖中鵬 中国社会科学院日本研究所専門家)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2013年11月12日