南中国海情勢を水が沸騰した鍋に例えるならば、米国はこの鍋の火に薪をくべる手だ。この手は最近、さらに薪を追加した。カーター国防長官は14日、フィリピンの大統領官邸であるマラカニアン宮殿で、アキノ大統領、ガズミン国防相と会談した。カーター氏は会談後の記者会見で、「米国はすでにフィリピンと南中国海の合同巡航を開始しており、フィリピンに兵士275人と戦闘機5機を派遣する」と表明した。
南中国海問題は本来、米国と関係がない。この南中国海と1万里隔たっているアメリカ大陸の国の南中国海における航行の自由は、これまでほんの少しも妨げられたことがない。冷戦終結後、米国の地政学的目標は旧ソ連との覇権争いから、米国の覇者としての地位を脅かすユーラシア大陸の国もしくは国家機関の出現を阻止することに変わった。そのため米国はユーラシア大陸で、陸地の均衡したパワー、海上の圧倒的優勢を維持する必要がある。しかし中国の台頭により、米国の地政学的な戦略目標が、空振りに終わる恐れが出てきた。そこで米国は元手を惜しまず、海上で中国を全力で包囲している。南中国海は、包囲の重点だ。
これらの目論みから、米国は南中国海で揉め事を起こし続けている。シャングリラ会合で航行の自由の問題を持ち出し、さらに島礁問題を巡り中国と対立するようフィリピンなどを煽り、さらに空母打撃群、爆撃機、ミサイル駆逐艦を中国の島礁に接近させた。しかしながら、米国は南中国海に対して特定の立場を持たないという態度を捨てておらず、外交面の広い余地を残そうとしている。
ところがカーター氏の14日の発言は、米国がこの態度を徹底的にかなぐり捨て始め、南中国海問題で中国に真っ向から対立しようとしていることを意味する。米国のこの動きには、深い考えがある。対象国、時期、場所の選択にも、次のような狙いがある。