3カ月余り前には、フランスとインドが36機の「ラファール」戦闘機の販売契約を結んだことも関心を呼んだ。「ラファール」は、フランスのダッソー社が1980年代から開発を始めた「マルチロール機」で、空中防衛や空中偵察、空対地・空対海の精確な攻撃、核攻撃などの機能を一身に集めた最新型の戦闘機である。一機で様々な用途に使えるだけでなく、一度の飛行で多様な機能を発揮することができ、「空飛ぶアーミーナイフ」と呼ばれる。今後30年の主力戦闘機として2004年と2006年に相次いでフランスの海軍と空軍での就役が始まった。
ここ数年、「ラファール」戦闘機は、リビア戦争と湾岸地域における「イスラム国」攻撃において本領を発揮し、高い評価を得て、国際市場を切り開いた。2015年、エジプトとカタールは相次いで、それぞれ24機の「ラファール」を購入する契約をフランスと締結した。インドは、フランスの「ラファール」戦闘機を購入した3カ国目の国となった。
インドによる大規模な軍備購入には、地政学的な意図がうかがえる。フランスのフィガロ紙のウェブサイトである評論家は、「インドの隣国である中国は軍事力の更新を進めており、独自の戦闘機を開発している上、パキスタンとも戦闘機開発で協力している。こうした動きはインドにとってもはや無視できるものではなくなっており、インドも自らの戦闘機の更新によって潜在的な脅威に対応しようとしている」と指摘している。AP通信は、「インド空軍が保有する戦闘機は約700機で、数の上では米国やロシア、中国に及ばない。中国軍の急速な拡張に不安を強め、パキスタンとは数十年にわたって不信の関係にあるインドは、その防衛力の強化をはかっている」と報じている。
米国の「リバランス戦略」の実施に伴い、アジア太平洋地域とりわけ南中国海の情勢は緊張を増し、周辺国の軍備競争を高めている。ストックホルム国際平和研究所の発表した武器販売データによると、2010年から2014年までの世界の武器輸入総量に占めるアジアの割合は48%に達し、戦乱の続く中東地区(22%)を上回った。アジアの武器弾薬市場における競争は激しく、フランスは、軍事メーカーの技術力と製造力の高さを拠り所として、市場シェアを拡大している。フランスによるインドとオーストラリアとの巨額の武器販売契約の締結は、自国の経済成長の早期の回復を促すためのフランス政府による「経済外交」の成果にほかならない。
フランスには、武器販売の強化を通じてアジア太平洋地域への影響力を高めようとする意図があることも明らかである。オランド大統領は2012年の就任後、アジア戦略を制定し、「フランスは太平洋国家である」と宣言し、フランスはアジア太平洋地域に「戦略的利益」を持っているとした。フランスの戦略目標は、この地域における影響力を高めることにある。