2013年1月22日、フィリピンは、中国に対する仲裁を国際海洋法裁判所に正式に提起した。中国外交部(外務省)はこれに対し、繰り返し声明を発表し、「フィリピンと仲裁裁判所は、仲裁案件の実質が領土主権と海洋境界画定、その関連問題にあることを無視し、中国が2006年に『国連海洋法条約』第298条の関連規定に基づいて行った適用除外宣言を故意に避けている」と指摘し、中国側の「承認せず、参加しない」との立場を強調してきた。
フィリピンの開始した仲裁に対し、中国側は完全否定を貫いている。フィリピンは、仲裁案の提起は中国との協議・交渉が行き詰まったからだとしている。だが実際には、フィリピンは黄岩島事件以来、交渉だけでなく中国側とのいかなる真剣な対話も拒否し、ほかの「南中国海における関係国の行動宣言」(DOC)の署名国とも協議していない、中国は2006年にすでに、海洋法条約第298条に基づいて「適用除外宣言」を行い、主権や歴史的権限、所有権にかかわる案件について仲裁裁判所の管轄除外を宣言した。仲裁結果にかかわらず、中国に不利な仲裁結果の執行が可能な条項は海洋法条約にはない。
南沙地域における全体的な情勢の変化を見据え、中国の南沙島礁における生活改善や最低限の軍事防御、主権・権益の維持をねらいとして、中国は2013年末、支配下の島礁の拡張工事を始めた。国際航路から離れたこれらの島礁には「航行の自由への影響」という問題はまったく存在しない。だが米国やフィリピンなどは強く反発し、誇張した主張で中国を非難した。
中国の多くの人から見れば、米国は、南中国海の局面を緊張させている最大の要因である。「アジア太平洋へのリバランス」戦略推進を加速する米国は、中国をアジア太平洋における主要標的とみなすようになっている。また米軍はあらゆる機会を使って中国の「接近阻止・領域拒否」の脅威をあおり、中国に特化した「空海一体戦」などの作戦概念を発展させている。こうした動きが、南中国海を含むアジア太平洋情勢を複雑化させ、緊張させているのは間違いない。