THAAD配備、韓国の安全リスクを引き下げず
米韓の終末高高度防衛ミサイル(THAAD)配備の重要な狙いは、朝鮮の核ミサイルの脅威への対応だ。しかしTHAADの性能、朝鮮半島の地理的特徴により、同システムは韓国の安全性を実質的に高めることはできない。
まず、THAADは中・長距離ミサイル迎撃を中心とするが、韓国が朝鮮から受けている最大の圧力は短距離ミサイル、ロケット砲、通常兵器だ。技術データを見ると、このシステムは高度40キロ以下のミサイルを迎撃できない。朝鮮がミサイルを後方に移せば、その多数の短距離ミサイルは韓国全域を網羅するばかりか、韓国国内に到達する際の高度も40キロ未満となり、THAADが効力を発揮することはない。またTHAADは朝鮮のロケット砲や通常兵器に対しても、何の効果も発揮しない。
次に、THAADは、韓米が先制攻撃するという朝鮮の懸念を深める。THAADの主要データは秘密にされておらず、朝鮮側も同システムの長所と限界を熟知している。THAADが朝鮮の主な作戦手段に対して効果を発揮しないのならば、朝鮮側は同システムを配備する真の狙いに懸念を転じることだろう。
それから、THAADは核ミサイルの研究開発を加速しようという、朝鮮の緊迫感を強める。朝鮮が年初、一連の核ミサイル実験を行ったあと、米韓は朝鮮に対して過度な圧力をかけた。朝鮮攻撃を想定した軍事演習を実施したばかりか、朝鮮の輿論への浸透を深め、朝鮮の内部からの崩壊を試みた。THAAD配備により、朝鮮は安全環境に明らかな変化が生じたことを確信する。これに対応する駒がないため、朝鮮は核ミサイルの研究開発を加速し、破壊力がさらに高い戦略兵器を求める可能性が最も高い。
米国に利用される韓国
韓国が世界各国から圧力を受けながらもTHAAD配備を決めたのは、主に米韓軍事同盟を強化し、朝鮮の核問題に対するさらなる責任の負担を米国に求めるためと判断されている。しかしながら、韓国のこの期待は空振りに終わる可能性がある。
米国の韓国へのTHAAD配備は、すべての賭け金を韓国側に賭けることを意味しない。米国にとって、朝鮮の核問題には、これを口実とし東アジアでミサイル防衛システムを配備し、中ロに対する東の防衛ラインを構築するという、大きな戦略的価値がある。朝鮮の長距離ミサイル発展および核兵器の小型化は、その核戦略の「付属品」にすぎない。
それからTHAAD配備は、米軍が韓国での存在感を強めることを意味しない。米国にとって、韓国に3万人弱の部隊を配備する戦略的意義はあまりなく、潜在的なお荷物・人質になる可能性もある。
THAAD配備、中米の戦略的な懐疑心を深める
米国のTHAAD配備は朝鮮を念頭に置いているように見えるが、実際には中ロ、特に中国を念頭に置くことは、見識のある人には明らかなことだ。米国のこのテクニックにより、国際秩序や世界の正義を守るという発言が論拠を失っている。
中米が戦略的な懐疑心を深めることは、米国の「アジア太平洋リバランス」にとって不利だ。米国にはアジア太平洋全体を保護する能力がなく、全体を養う経済力もない。米国の「アジア太平洋リバランス」戦略は、中国と敵対せずアジア太平洋諸国との関係を強化することが重要であり、中米関係の安定が重要な前提条件になる。この前提条件が満たされなければ、「アジア太平洋リバランス」のコストは利益を大幅に上回る。韓国へのTHAAD配備を軽率に決定する前に、米国はこの損得勘定をしていなかったようだ。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2016年8月2日