自身の優位のために他国の安全を犠牲にすべきではない
ドイツのラジオ局「ドイチェ・ヴェレ」(中国版)によると、中国の常万全・国防部長は11日、香山フォーラムの開幕式の式辞で、「一部の国は、軍事分野での絶対的な優位を求め、軍事同盟を絶えず強化し、他国の安全の犠牲を代価として、自身の絶対的な安全を求めている」と指摘した。常氏はさらに、「現在はますます地政学的な要素が際立っている。一部の地域では、外部勢力にあおられて問題が悪化し、国際的な安全にも不安定要素がもたらされている」と語った。仏AFP通信はこれを取り上げ、アジアにおける米国の干渉に対する批判と解説した。
米国による「アジア太平洋へのリバランス」戦略の推進につれ、特に軍事分野での取り組みの推進に伴い、アジア太平洋地域とりわけ中国周辺領域での領土争いがますます増加し、激化していることは間違いない。
「アジア太平洋へのリバランス」戦略は、米国のオバマ大統領が2011年11月のアジア太平洋訪問で、「米国は『太平洋国家』であり、アジア太平洋への『駐留』を進める」と高らかに宣言したことに端を発する。「アジア太平洋へのリバランス」の概念はその後、2012年1月に発表された米国防総省「新国防戦略」で正式に打ち出され、軍事資源の投入の重点がアジア太平洋と中東の双方に置かれていた「9・11」以降の戦略を、アジア太平洋を重心した戦略へ転換することが明確に打ち出された。
米国はこれ以降、政治的には、「米日同盟」「米韓同盟」「米比同盟」「米日豪同盟」などアジア太平洋地域における伝統的な同盟国との関係を強化しながら、インドやベトナム、ミャンマーなどへと新たな同盟関係を積極的に広げた。経済的には、「環太平洋戦略的経済連携協定」(TPP)を強力に推進。軍事的には、軍事力の配備を強化し、海外に配備された自国の海軍力と空軍力の60%を2020年までにアジア太平洋地域に結集させる計画を打ち出した。
その一方で、アジア太平洋地域では問題が絶えずエスカレートして行った。中日関係の急劇な悪化に直結した日本による釣魚島のいわゆる「国有化」から、フィリピンのいわゆる「南中国海仲裁裁判」、さらには韓国へのミサイル防衛システム「THAAD」配備に至るまで、その影には米国の姿が常にあった。
「米国の『アジア太平洋へのリバランス』戦略は総体的に見て、効果を上げていると言える。米国のアジア太平洋地域における軍事同盟がこれほど強かったことはなく、中国以外のアジア太平洋国家との関係がこれほど良好だったこともない。アジア太平洋地域における米国の影響力は全体として増強されている」。中国社会科学院の陶文釗研究員は本紙(『人民日報海外版』)の取材に対し、「米国がアジア太平洋の国家との関係を強化することに問題はない。だが米国は、同地域の国家が自らの問題を自ら解決することを尊重しなければならず、他国の持ち分に介入したり、ほかの国々の仲違いをねらったりすべきではない。米国の『アジア太平洋へのリバランス』戦略は間違いなく、中国の安全分野における複雑性を高め、アジア太平洋地域の安全局面の不確定性を増している」と指摘する。