近年、欧米諸国の政治・経済の影響を受け、「反グローバル化」が信じられない速さで世界を席巻している。トランプ氏が大統領当選後に打ち出した「米国優先」やイギリスのEU離脱などの現象も「反グローバル化」の表れである。
2008年の金融危機後、欧米諸国が保護貿易措置を訴える頻度は以前より高まったが、筆者は反グローバル化とグローバル化は「二者択一」ではなく、米国も徹底的に「鎖国」することはないと見ている。資源や人などの移動が頻繁である現在、無条件で自国を閉ざす国などない。反グローバル化は逆にグローバル化にプラスの面もある。
例を挙げると、米国が参与するグローバル化とは、米国の資本や産業が世界各地に流れることである。トランプ大統領は公約を果たし、米国の工業を復興させ(再工業化)、米国の海外資本を本土に戻したいと考えている。これもグローバル化の一種の形である。
資本を外国に出すことがグローバル化、戻せばグローバル化ではないというわけではない。EUも同じである。イギリスのEU脱却はEUにとってダメージであり、脱却後のイギリスと欧州諸国の競争は激化し、このような競争はグローバル化にもつながる。
2008年の金融危機前、米国の中産階層は全体の75%を占めていたが、現在は50%にも満たない。グローバル化自体に問題があるのではなく、ただ、グローバル化と主権国の間で衝突が発生した。トランプ氏はグローバル化を進めたくないのではなく、現在のようなグローバル化はいけないと考えている。米国に利益がないためである。
トランプ氏の大統領当選後、米国は大規模減税などの政策だけで資本を本土に戻したが、トランプ氏は米国の資本を完全に主導できていない。グローバル化の基本は多国籍企業の資本を主導することであり、資本移動を主導できる人などいない。トランプ氏も同じである。