フィリピンのロレンザーナ国防相はこのほど、米比両国は68年前に締結した「米比相互防衛条約」を見直すべきと述べた。米国が南中国海で軍艦による巡航の頻度を上げることで、フィリピンが中国と米国の南中国海における衝突に巻き込まれることを防止するためだという。この発言は重要な点を率直に指摘しているため、直ちに海外メディアから注目された。
ロレンザーナ氏は昨年12月にも、同条約の廃止を願う発言をしていた。すでにフィリピン国防省の弁護士に審査手続きを開始し、同条約がフィリピンの現在の国益に合致するか評価するよう指示したという情報もある。フィリピン国防相のこの態度は、フィリピン政府の同問題における立場をはっきり伝えた。つまりフィリピンは自国を米国の戦車に縛り付け、米国が南中国海で中国に対抗するための「駒」になるつもりがないということだ。
同盟及びパートナーシップにより国際秩序に対する主導権を維持する。これは米国が覇者としての地位を維持するための一貫した手法だ。フィリピンは長年に渡り、米国が南中国海問題を利用し中国の発展をけん制し、南中国海事業に直接介入するための重要な足がかりの一つとなっている。しかしドゥテルテ氏は大統領に就任後、比中関係の回復に力を入れ、両国の経済・貿易・農業・観光などの分野の協力を強化した。また南中国海問題は直接的な関係国が友好的な協議と交渉により解決すべきと繰り返している。現在の中比両国の良好な協力関係は得難いものであり、惜しむべきだ。米国は同条約を利用しフィリピンを再び巻き込もうとしているが、フィリピン政府は自国も中国との関係も失えないことを理解している。
1951年に締結された同条約は冷戦の産物で、フィリピンにとって完全に有利なわけではない。米国が太平洋地域における軍事的な存在感を強めることが本質であり、フィリピンに安全保障を提供するのはついでに過ぎない。米比の同盟関係における不平等な地位により、米国はこの軍事同盟関係の中で常に主導権を握っており、同条約に対しても最終解釈権を持つ。フィリピンに「安全保障」を提供するとは、限定的な姿勢に過ぎない。