イラク国民議会は5日の特別会議で、米国など外国軍のイラク駐留の打ち切りに関する決議を採択した。同日、イラン政府もイラン核合意の履行を完全に停止することを宣言した。新華社が伝えた。
イラクとイランのこの決定は、イラクのシーア派武装組織への空爆、イラン高級将校・スレイマニの「ピンポイント排除」といった米国の一連の行為に対する報復だとアナリストは指摘する。米国はこれに強硬に対処する可能性が高く、中東情勢の緊張はさらに激化するだろう。
中国社会科学院西アジア・アフリカ研究所政治研究室の唐志超室長は「イラク議会が米軍の撤退を求める決議を採択したのは、事実上イランの側に立って米国に反対することを明確に表明したものであり、イラク戦争以来の米国の対イラク政策の完全な失敗を意味する。米軍はイラクで厄介な立場に置かれる。イラク国内の反米勢力も米軍追放・攻撃の合法性を得た」と指摘する。
イラン政府は5日、イラン核合意の第5段階、すなわち最終段階の履行停止を宣言した。合意の最後の重要な制限である「遠心分離器の数量制限」を放棄する。イラン政府は声明で、同国の核開発計画が今後いかなる制限も受けないことを表明した。
だが注目すべきは、イランが核合意に「死刑判決」を下さず、一定の余地を残したことだ。イランは核合意の履行停止を宣言すると同時に、国際原子力機関(IAEA)との協力継続も表明。さらに、制裁が解除され、イランの経済的利益が保障された場合には、核合意の約束を再び履行する用意があるとした。
中国国際問題研究院で中東問題を専門とする李国富氏は「イランのこの行動は1つには米国への警告であり、もう1つには引き続きイラン核合意を守るよう欧州を引き込むものだ」と考える。
イラク議会の米軍撤退要求に対して、トランプ米大統領は「イラク政府は米軍の長期駐留の費用を払う必要がある。さもなくば米軍は撤退しない」と脅した。また「たとえ今後米軍がイラクから撤退しても、米国はイラクに大規模な制裁を科す」と述べた。
イランの核合意履行停止宣言に対して、米政府はまだ姿勢を表明していないが、すでにその前からイランに対して十分に強硬な姿勢を取っている。トランプ氏は、イランが米側の人員や施設を襲撃した場合、イランの52の標的に対して凄まじい攻撃を行なうと警告した。
アナリストによると、米国とイランの対立は日増しに先鋭化しており、「代理」モデルから直接衝突へと次第に変化している。両国間の対立はイラクの安全と安定に影響を与えるだけでなく、中東地域の他の国々にも波及する恐れがある。
米国とイランの対立激化を受けて、欧州諸国は次々に仲裁に動いている。英仏首脳はトランプ氏と電話会談し、ドイツは速やかに対応策を打ち出すためにEU外相会議を前倒しで開催することを提案。EUもイランのザリーフ外相の訪問を招請した。
中国社会科学院欧州研究所国際関係研究室の趙晨室長は「欧州にできる事は非常に限られており、緊張を緩和することだけだ。EUが米国の外交政策を敢えて批判することはないため、たとえザリーフ外相の訪問に成功しても、実際の成果を得るのは難しい」とする。(編集NA)
「人民網日本語版」2020年1月8日