中国に暮らす56の民族はそれぞれ独自の伝統文化を持っている。それらが失われることがないように、中国では文化保護の取り組みが積極的に成されているが、民族の伝統をしっかりと次の世代に伝えていくためには、政府の支援に加えて各民族の人々のたゆまぬ努力も欠かせない。
きらびやかな衣装を身にまとって伝統舞踊を披露するウイグル族の女性
もっとも、努力という言葉を使ったが、それは必ずしも辛さをともなうとは限らない。新疆維吾爾(ウイグル)自治区では、人々が暮らしの中で伝統を守り、むしろ日々の生活に楽しみと潤いをもたらすものとしている。その好例と言えるのが民族独自の音楽であり、舞踊だ。とりわけ今回の取材で最後の訪問地となった巴音郭楞(バインゴリン)蒙古自治州庫爾勒(コルラ)市では、そのことを強く感じさせられた。
天然ガスや石油などの豊富な地下資源、さらには梨やワインといった特産品を有するこの地は、新疆ウイグル自治区でも特に発展が目覚ましいエリアだ。しかし、開発とともに民族の文化が失われることはなく、行く先々で伝統音楽や伝統舞踊に触れることができた。
ウイグル族の伝統楽器である都塔爾(ドタール)を弾く男性
ウイグル族の家庭を訪れると、誰かが楽器を手にして弾き語りを聞かせてくれる。そうしてダンスが始まれば、一緒に踊りましょうと笑顔で誘われる。ウイグル族はしばしば「歌と踊りの民族」と称されるが、その言葉通り誰もがダンサーであり、アーティストであるかのようだ。
また、同地には多くの蒙古族が暮らしており、その歌舞を目にする機会もあった。草原を故郷とする彼らの音楽と舞踊は、素朴で温かみがある。パフォーマンスを披露してくれた蒙古族の親子に話を聞くと、民族伝統の歌と踊りは、暮らしと切り離せないものであるという。お父さんによれば、ステージ以外でも自宅でダンスをすることは珍しくないそうで、「可愛いこの子と一緒に踊っている時が、私にとって一番幸せな時間です」と語りながら、娘を見て目を細めていたのが印象的だった。
伝統舞踊を披露する蒙古族の女の子
見事なダンスを見せてくれた女の子は、幼い頃から両親に踊りを教わり、舞台に上がれるまでになった。若干6歳にして、すでに立派な伝統文化の継承者だ。彼女が大人になって自分の家庭を持った時、きっと我が子にも伝統舞踊を教えるだろう。このようにして古代シルクロードの時代から今日に至るまで、民族の文化は伝えられてきたのだ。
世界でも他に例を見ない急速な経済発展を遂げた中国は、社会の変化もまた早い。しかし同時に、後世に残すべきものは、政府と人々が一体となって守り抜く。新疆ウイグル自治区、そして中国とは、まさしく民族文化のゆりかごである。これからも各民族が一致団結し、豊かな多文化社会を育んでいくに違いない。
「北京週報日本語版」2020年12月15日