ピューリッツァー賞受賞者、米紙「ワシントン・ポスト」記者のキャロル・D・レオニング氏とフィリップ・パッカー氏の新書「I Alone Can Fit It: Donald J. Trump’s Catastrophic Final Year(私が1人で決める、トランプの壊滅的な最後の1年)」(共著)が間もなく発売される。
本書はトランプ大統領の最後の1年に起きた出来事を記録。それは、2020年の世界的に注目を集めた大統領選の夜にホワイトハウスで何が起きたかや、大統領選の敗戦後のトランプ政権の中心チームが、いかにトランプ氏の「日増しに狂気の度合いを増す行為」を処理したかなどだ。情報によると、レオニング氏とパッカー氏は本書のために140人余りの「情報源」(うち大半が匿名)を取材し、トランプ氏の2時間余りの独占インタビューを行ったという。
新書の一部抜書がこのほど事前に公開され、各大手メディア及び人々から注目を浴びた。彼らは本書の内容が「テレビドラマのようだ」「事実は小説より奇なり」と述べた。それではトランプ氏のスクープを売りとする多くの本のうち、間もなく発売となる本書はどのような斬新な観点を示したのだろうか。澎湃新聞は各大手海外メディアの報道、及び本書の抜書された内容を整理した。
大統領選の夜、トランプ氏の次男が正気を失い怒鳴り散らす
「ビジネス・インサイダー」などの海外メディアの報道によると、レオニング氏とパッカー氏は新書の中で、次のように明かした。トランプ氏の次男のエリック氏は2020年の大統領選の前日、自信満々だった。エリック氏は友人に、父が322人の選挙人を得て再任を果たすと述べていた。しかし開票後、バイデン氏の選挙人がトランプ氏を上回り、各州で次々と逆転した。エリック氏はこれに困惑し、怒りを覚えた。
報道によると、トランプ氏の選挙活動の作戦室にされたホワイトハウスの「マップルーム」で、エリック氏は正気を失い怒鳴り、選挙データのアナリストに「カネを払っているのにどうしてこんなことになったのか?」「選挙が盗まれた!」「これらの票はどこから来たのか?なぜ合法なのか?」と叫んだという。
バイデン氏は最終的に選挙人306人を獲得し、232人のトランプ氏を破り大統領選に勝利した。バイデン氏の全国の得票数もトランプ氏を700万票上回った。
新書は、各州で処理された郵便投票数が過去最多で、集計時間が延びたため、トランプ氏とその子はこれに困惑し不満を持ったと指摘した。
選挙の夜、トランプ氏はホワイトハウスでスピーチし、「今回の選挙に確かに勝利した」と述べた。レオニング氏とパッカー氏は新書の中で、郵便投票でバイデン氏が追い上げる前、トランプ氏は「自分がすでに勝ったと本当に信じていた」ようだったと記した。これはトランプ氏がその後、大統領選が盗まれた、選挙結果は「大ウソ」と公言する始まりとなった。
新書によると、米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長は、トランプ氏とその腹心が敗戦後にクーデターを引き起こすか、その他の危険もしくは違法な措置を講じることを恐れていたと述べた。そこでミリー氏は複数の軍高官と非公式に、「トランプ氏を阻止する手段を講じる」ことを検討した。
本書の筆者は、トランプ氏がマーク・エスパー国防長官やウィリアム・バー司法長官などの要人を解任すると、ミリー氏はこれが「不穏な出来事の始まり」であるとの懸念を強めたと指摘。2020年の大統領選後、米国防総省内の多くの要人がトランプ氏の腹心に変わった。
ミリー氏は一部の議員及び同僚にクーデターの脅威について話し、起こりうることに「警戒を維持」すべきと判断した。新書の筆者によると、ミリー氏は自身の助手に「彼ら(トランプ氏とそのチーム)は(クーデターを)試みるかもしれないが、成功することはない……(中略)……軍隊がなければできないからだ。我々は銃を持っている」と話した。
匿名の友人はかつてミリー氏に、「彼ら(トランプ氏とそのチーム)は(バイデン)政権を転覆させようとしている、これは本当のことだ」と述べた。本書の複数の取材対象はいずれも、ミリー氏がその中で「民主を崩壊の崖っぷちから引き戻す」重要な役割を演じようとしたと指摘している。
現在バイデン政権で元のポストに留任中のミリー氏はその後、1月6日の議会襲撃事件について証言し、トランプ氏から「攻撃」を受けた。
敗戦後のトランプ氏、「陰謀論の幻想」に陥る
米CNNの報道によると、本書は新たな角度から、トランプ氏が敗戦後にいかに「陰謀論に満ちた幻想」に深く陥り、「孤立させられた権力の空白」に陥ったかを明らかにした。
本書によると、1月6日の議会襲撃事件後、ミリー氏や当時国務長官だったマイク・ポンペオ氏を含む高官は毎日、電話会議を開いた。ある高官は筆者に、これらの会議の共通のテーマは、2021年1月20日に何としてでも平和的に権力を移譲させることだった。「航空機の着陸装置が作動せず、エンジンしかなく燃料が尽きたが、この悪童(トランプ氏)を着陸させなければならないようなものだった」
本書はさらに、ペロシ下院議長とミリー氏による、権力移譲前の「脆弱な時期」における個人的な対話の内容を明かした。ペロシ氏は議会襲撃事件後、「狂気じみた危険な」トランプ氏が任期の最後の数日に核兵器を使用することを深く懸念した。ミリー氏は、「手続きの保証」によりそのようなことは起きないと何度も約束した。
トランプ氏は1月20日、バイデン氏の大統領就任式に出席せず、権力移譲が順調に完了した。ミリー氏は本書の最後に、クーデターが起きなかった喜びを筆者に示した。「万能の神に感謝する。我々の飛行機は安全に着陸した」
「中国網日本語版(チャイナネット)」2021年7月27日