長期的計画に長けた中国式民主
しかし、現在の西側諸国はボトルネック打破のための有効な手段をいまだ考えついていない。私は中国の出した「処方箋」の効き目を非常に注視しており、引き続き観察したいと思っている。中国式民主には以下のような優位性があると思う。
まず、中国の民主制度は専門家からの意見を多数採り入れ、実際の問題を反映し、専門性がありつつ世論をも考慮することができるという点だ。例えば今年の政府活動報告では、中国が現在直面している経済発展の困難――例えば消費の低迷、サプライサイド改革が正念場を迎えているなどの難題を列挙し、発展において何が足りないのかを明確に認識している。報告には危機意識とその対策の双方が書かれ、西側諸国の具体性を欠く施政演説と比べてもかなり明確だと言えよう。
第2に、中国は長期的な目標の策定に長けているという点だ。例えば「二つの百周年」を節目とする奮闘目標は、中国共産党建党100周年に小康社会の全面的完成という目標を達成するため、国を挙げて数世代にわたり取り組んできた。これは、トップが変わり続ける西側の民主とは大きく異なる。
西側民主の普通選挙制度は、対立候補を否定し、政権交代のたびに政策が大きく調整される。前政権の政策の維持は非常に難しく、全てがゼロから始まる。また、選挙に勝つために候補者はしばしば有権者に向けて短期間での公約実現を約束する。例えば昨年の日本の衆議院選挙を例にすると、さまざまな政党候補者が支持を取り付けるため、当選後は多額の補助金を出すとか、大規模な国家投資をして経済発展をけん引するなどと言ったりする。そんな状況を憂えた財務省のある役人は、政治家は選挙に勝つために日本の財政の長期的安定を無視していると『文藝春秋』に寄稿した。候補者の争いは、人々の欲するものや解決すべき課題について自ら考え、導いた答えを有権者に示すためのものではもはやなく、策を{ろう}弄していかに勝つかを競うものになってしまっている。このような西側の民主が長期的戦略を確立し、それに向けて取り組むのは至難の業だろう。