米国・ASEAN首脳会議が12、13日にワシントンで開催される。バイデン米大統領は1週間後に日韓を訪問し、東京で米日印豪4カ国の枠組み「クアッド」の首脳会合に出席する。多くのメディアはこれを受け、ロシアとウクライナの衝突発生から3カ月弱が経過した後、バイデン政権がアジア太平洋に注意を向け、特に同地域の同盟国とパートナーの抱き込みに取り組むと伝えた。バイデン氏の大統領就任後、米政府は同盟体制の構築を改めて強調するようになった。特に米国はアジア太平洋でより大きな力を傾け、伝統的な同盟体制を堅固にし、新たな同盟関係ネットワークを構築しようと試みている。
米国のアジア太平洋における同盟体制の構築には、2つの大きな変化が見られる。まず、地政学を中心とする同盟体制から、価値観を基礎とする同盟体制への変化だ。次に、米国を中心とする等級制の同盟体制から、複数の中心と形態を持つ多層的なネットワーク型の同盟体制への変化だ。
これを踏まえた上で、米国はアジア太平洋で多層的かつ多面的な新しい同盟体制を構築しようとしている。このアジア太平洋の新たな同盟体制には主に次の特徴がある。
(一)「レベル別」。これは実際に、米国のアジア太平洋同盟体制の固有の特徴だ。米国のアジア太平洋同盟体制はコア同盟国、同盟国、戦略的協力パートナーの3つのレベルで構成される。
コア同盟国は「アングロサクソングループ」で、その主な担い手はオーカスとファイブアイズだ。英国、豪州、NZ、カナダは米国と一般的な同盟条約を結んでおり、さらに一致した宗教、文化、価値観を持つ。また情報や軍事などの面で同盟を超えた関係を構築している。
同盟国は米国のアジア太平洋同盟体制における主な戦略的足がかりだ。日本、韓国、タイ、フィリピンなどは米国と一般的な同盟条約を結んでおり、価値観も近い。
戦略的パートナーシップは、米国のアジア太平洋同盟体制の周囲を支える力だ。米国はインド、シンガポール、インドネシア、マレーシア、モンゴル、ベトナムなどと程度の異なる戦略的パートナーシップを結んでいる。この中ではインドが最も特殊だ。米国はインドを抱き込みつつ、警戒している。
(二)「ネットワーク化」。米国はアジア太平洋同盟体制をNATO化させ、同盟の境界線を跨ぐ多くの新しい協力体制を構築しようとしている。この分散型で複数の中心を持つ同盟ネットワークを通じ、米国は自国の戦略的な柔軟性と持続可能性を高めようとしている。「インド太平洋戦略」は米国の重要な戦略的概念であり、「クアッド」は米国の重要な足がかりだ。このメカニズム・枠組み内でさらに、数組の二国間防衛・外交トップによる「2プラス2」対話メカニズムと、三カ国間協力メカニズムを形成した。日豪は今年1月に「円滑化協定」に署名し、両国関係を準同盟に押し上げた。
(三)「地域を跨ぐ」。伝統的に、米国のアジア太平洋における同盟体制と大西洋を跨ぐ体制は相互に独立したものだ。こうすることで、アジア太平洋と欧州の安全事業は米政府を経由しなければならず、米国は戦略的な中枢としての地位を維持しやすい。一方で、米国は「3洋連動」の構造を形成しようとしている。大西洋・インド洋・太平洋の同盟体制をひとまとめにし、アジア太平洋のNATO化を促している。その一方で、米国はNATO加盟国とアジア太平洋同盟国間の二者間軍事協力を促そうと取り組んでいる。英国とフランスはすでに西太平洋での巡航活動を開始している。先ほど英国と日本は「歴史的」な「円滑化協定」の署名に向け合意に達した。日本による「円滑化協定」の署名はこれで3件目であり、欧州諸国との署名はこれが初。
(四)「分野を跨ぐ」。米国の伝統的な同盟体制は主に、政治や軍事などの「ハードセキュリティ」分野に注目していた。現在の米国はさらに「ソフトセキュリティ」分野の同盟もしくは準同盟体制の構築に取り組んでいる。米国は多国間で「インド太平洋経済枠組み」の構築を促し、TPP脱退による経済・貿易面の主導権の損失を補おうとしている。さらに細かい分野においても、米国と同盟国は積極的に活動している。
最後に、ロシアとウクライナの衝突が続くにつれ、米国がロシアの地域及び国際的な影響力を弱めるという地政学的目標を、ロシアの政治制度を変えるという価値観の目標に拡大することに注意が必要だ。これに応じ、米国の価値観を基礎とするアジア太平洋同盟体制も、より広範な価値観同盟体制の構築に向け発展する可能性がある。(筆者・張家棟 復旦大学米国研究センター教授)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2022年5月13日