現在の国際情勢は非常に複雑だ。新型コロナウイルスの感染拡大が続き、ウクライナ危機の雲に覆われ、一国主義と覇権主義が台頭している。海洋分野では、伝統的・非伝統的な安全リスクが次々と生じ、世界の海洋の秩序維持が厳しい試練を迎えている。筆者は、海洋分野で中国が初めて掲げたグローバル安全保障イニシアチブの実行を模索することが、世界の海洋の共同の安全を実現する大きな支えになると考える。
海洋分野でグローバル安全保障イニシアチブを実行するためには、まず平和的手段により各種海洋紛争及び食い違いを解消する全体的な原則を堅持する必要がある。人類の海洋利用の歴史はある意味、海洋を支配し争奪する歴史と呼べ、これにより衝突が生じたことは記憶に新しい。対話と協議及び外交ルートによる海洋紛争の解消が依然として、世界の平和と安寧を守る最も効果的な手段であることは、歴史の経験からも明らかだ。人類の海洋利用の拡大に伴い、海洋関連の紛争は主権国間だけに留まらなくなっている。法人もしくは自然人や国際機関が加わる紛争が増えており、海洋紛争の多様性と複雑性が日増しに顕在化している。平和的な手段で海洋紛争を解消することは、各国が海洋分野で共同の安全を実現するための最低限の共通認識になるべきだ。
次に、試練の中で新たなチャンスを育み、「先に二国間、次に多国間」という手段により世界海洋安全ガバナンスを試みるべきだ。海洋からの安全の脅威を避けられる国はなく、これらの脅威に対応することが各国の利益と訴求の最大公約数だ。各国が海洋運命共同体の理念を貫き、一国主義と地政学の固有の考えから脱却し、衝突と排他の海洋競争及び駆け引きを超越することで、初めて真の海洋共同安全を実現できる。この過程においては特に、一部の国が価値観で区別し、多数の国を多国間枠組みから排除しようとするやり方を拒否し、閉鎖的で排他的な小グループを作る「偽の多国間主義」に断固反対する必要がある。
さらに、国連憲章の主旨と原則を堅持し、各種形式及び手段により世界海洋安全ガバナンスのルールと秩序の構築を進めるべきだ。現行の海洋法制度及びルールで海洋の新たな状況及び課題に対応する際の不足を補い、現在の海洋ガバナンス枠組みの整備と改革を促進するため、中国は近年、国家管轄海域外の生物多様性の保全と持続可能な利用の協定の制定、国際海底エリアの鉱産資源開発規則の制定といった海洋新秩序・新ルールの協議に深く参加している。中国とASEAN10カ国も南中国海で、2002年の「南中国海各方面行為宣言」の実践に取り組み、「南中国海行為準則」の協議を積極的に進め、地域ルールの制定及び南中国海の安全・安定の維持を促している。
グローバル安全保障イニシアチブは、世界的な安全の課題に対応するため中国の知恵を提供した。百年に一度の大変動を迎え、人類と海洋の相互依存が深まり、海洋分野の伝統的・非伝統的な安全の脅威が重なっている。平和的な手段による海洋紛争の解消、海洋運命共同体の理念による海洋協力の促進、海洋安全ガバナンスの国際秩序及びルールの積極的な整備により、初めて人類社会の共同の海洋利益を守り、恒久の平和と普遍的な安全という美しいビジョンを実現できる。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2022年6月1日