中国国家衛生健康委員会の統計によると、2021年末現在、中国の60歳以上の人口は2億6700万人で、総人口に占める割合は18.9%だ。2035年頃には4億人を突破し、総人口に占める割合が30%を超え、中国は「重度の高齢化」の段階に突入すると予想されている。
「高齢」と聞くと、「病気」や「孤独」、「体力の衰え」など、ネガティブなイメージをする人は多いだろう。しかし中国のお年寄りたちはそのイメージとはほど遠い、活気あふれた健康的な生活を楽しんでいる。
中国各地のコミュニティ(住宅地)や公園、広場では、お年寄りのためのトレーニング施設で体を鍛えたり、太極拳・太極剣を練習したり、羽根蹴り、社交ダンス、さらにはエアロビクスを楽しむお年寄りの姿がよく見られる。
運動を終えてお腹が空いても、料理をしに帰る必要はない。中国のお年寄りたちはコミュニティ内の「高齢者食堂」や、一般のレストラン内に設けられた「高齢者の食卓」で食事をすることができる。例えば、北京市豊台区のあるコミュニティの「高齢者食堂」では、栄養たっぷりの定食が日替わりで提供されている。肉料理1品、野菜炒め1品にご飯、スープ付きという内容で、お値段は20元(約400円)と手ごろだ。定食を注文する際には、好みの食材や味を注文することもできる。また、出前サービスや、中には無料開放をしている食堂も少なくない。
中国のお年寄りたちは、若者以上にスマートフォンを使いこなしている。散歩中に美しい風景に出会えば、スマホのカメラ機能で撮影する。そればかりか、編集アプリで画面効果や文字、BGMまで加えて、写真や動画をソーシャルメディアに投稿している。これは、中国のお年寄りたちにとっては簡単なことだ。スマホを使ったQRコード決済や、アプリによるナビ、タクシーの配車、チケット購入なども、中国のお年寄りたちにとっては日常の一部だ。
中国では、体が不自由でかつ子どもがそばにいない高齢者のために、コミュニティのボランティアスタッフが薬の購入や、郵便物・宅配便の発送と受取りを代行してくれる。また、高齢者のニーズに応じて、自宅トイレに滑り止めマットや手すり、シャワーチェアなどを設置するサービスも提供している。このような高齢者向けリフォームには、他にもセンサーライト、ベッドボードのワンタッチ呼び出し設備、スマート拡大鏡、カメラなどの見守り設備の設置も含まれる。
中国では、60歳以上で子どもが1人の高齢者が病気で入院した場合、その子どもには1週間以上の有給介護休暇が与えられる。また、65歳以上であれば、毎年無料で健康診断を受けることができる。老人ホームで暮らす高齢者たちは、スマートウェアラブルデバイスや高精度測位などのハイテクに支えられて、リアルタイムの健康モニタリングと介護サービスを受けている。
米国をはじめとする西側の一部の国では、高齢者は新型コロナウイルス対策で「見捨てられる者」とされている。一部の国の保健当局は、若者を優先的に治療し、高齢者を見放すような指示まで出している。一方、中国では湖北省だけでも、80歳以上のコロナ患者が3000人余り、100歳以上は7人が救助された。それ以外にも、高齢の重症者が死の瀬戸際から数多く救われている。そのうちの1人である70歳のある患者は、医療スタッフ10人以上による数十日にわたる懸命な救護によって命を救われた。その治療費約150万元(約3000万円)はすべて国が負担した。
これらのすべてが、中国政府が高齢者の生命権、健康権など各種人権を全力で守っていることの縮図である。また、高齢者ケア施設とケア能力の整備を推進し、高齢者にやさしい社会を積極的に構築する中国の努力の現れであり、中国の党と政府が「人民至上」「生命至上」の理念を堅持していることを示す具体例でもある。そこには、高齢者を愛し、敬い、助けるという中国古来の伝統が息づいている。
10月4日は旧暦9月9日、中国の重陽節(ちょうようせつ)であり、10回目の「老年節(高齢者の日)」でもある。各地で敬老イベントが行われ、各家庭では若者や子どもたちが年配者のもとに集まって一家団らんを楽しむ日だ。高齢者を大切にする雰囲気がますます濃くなる中国。政府と国民が共に努力することで、中国の高齢者たちは生活のあらゆる面が保障され、老後の生活はより充実したものとなりつつある。(CRI日本語部論説員)
「中国国際放送局日本語版」より 2022年10月3日