6月12日、上海万博でのジャパンデーによって、日本はもう一度注目の的となった。
鳩山由紀夫前首相が約束通り会場を訪れただけでなく、日本館の近くにある黄浦江には、かつての遣唐使が使ったものを再現した船ガ浮かび、来場者の誰もが日本に焦点を当てて関心を寄せた。
黄浦江に浮かぶ遣唐使船
上海万博の会場は、黄浦江をはさみ、浦東と浦西の二つのエリアからなる。浦東から浦西にわたる際、無料の渡し船で十分ほど移動できる。渡し船は普通の客船だが、色鮮やかとは言えない。
6月12日に赤い船首、黄色い屋根がつく船室、白い船体の遣唐使船が黄浦江に浮かんだ。多くの来場者は教科書などで遣唐使の歴史は知っているが、再建された船を目の当たりにして、こんな船で日本からやって来たのかと興味津津と見つめていた。
1300年前から200年間、遣唐使船は中国と日本の間を行き来した。今回再現された船の長さは30メートルで、幅も10メートル未満。現在の黄浦江の渡し船と比べても大きいとは言えない。しかし、1300年前としては世界最先端の技術を駆使して造られた船だった。その船は、当時の中国文化、制度などを学んだ遣唐使、あるいは中国の文化などを日本に伝えたいと思った中国の文化人たちを運んだのだった。
鑑真和尚もその中の一人だった。6月6日は鑑真和尚の命日であり、その前後数日だけ奈良の唐招提寺では、和尚の座像を一般公開する。数多くの日本の市民は鑑真和尚の功績を称え、唐招提寺に詣でる。千年あまりの間、それが絶えることはなかった。
日本の市民が鑑真和尚に対する尊敬の念が、千年にわたっても引き継がれてきたことを語ると、多くの中国人は、文化を大事にする日本人の気持ちに感動する。目の前の遣唐使船を再度見ると、それはただほかの渡し船に比べて鮮やかな色をしているだけではない。長い歴史、奥深い文化などがそこから見えてきた。世界文化が容易に交流できる今日では、万博ひとつで世界が見えてくる。それを大いに吸収して、自分自身、自国の文化も豊かにしていくと多くの人は思っただろう。
報道によると、遣唐使船の再現は、角川文化振興財団によって企画されたそうで、日本から親善大使を務める俳優の渡辺謙氏も来訪した。江蘇省張家港で建造された「遣唐使船」は、その後日本に運ばれ、5月8日に大阪港を出て、北九州、五島列島、長崎などを経由して上海に入った。経由地の日本人もその遣唐使船を見て、千年前の中日文化の交流の熱い状況が想像できただろう。
日本館に現れた鳩山特使
約束通りに鳩山由紀夫氏は、6月12日のジャパンデーに合わせて、幸夫人と一緒に会場を訪れた。
5月末に、中国首脳との会談で万博を訪問すると約束した当時の総理・鳩山氏の話はマスコミで大きく報道された。6月2日の突然の首相辞任により、もう上海万博には来ないのではないかとも心配された。しかし、力強く挨拶する鳩山前首相を見て、日本館に来場者たちも盛大な拍手を送り、中国のマスコミも詳細にそれを報道した。
日本館のナショナルデーに上演された日本古典マジックショー(写真・馮進)
経済発展に伴って、中国での石油・石炭などのエネルギー需要はでますます高まり、国内の資源だけでなく、外国から輸入しなければならなくなった。またエネルギーの多用によって環境問題も新国際を増してきた。古代の詩歌で歌われた清い長江は、いつの間にか淀んでしまった。環境、水資源などは、市民の一大関心事となっている。
首相特使として日本館を訪れた鳩山氏のスピーチは環境、水に絞ったもので、来場者の心をつかんでいた。
40年前、東京湾、大阪湾などの汚染はひどかったそうだ。しかし、経済発展を維持しながら、日本は汚染、公害からきれいに脱出しただけでなく、環境技術、省エネの国からさらに太陽光、原子力などの新エネルギーを輸出する国へと変貌している。工場や生活から排出した汚水を処理することによって、市民の日常生活は守られ、社会もきわめて安定し、GDP規模から見て、一九六八年以降は世界ナンバー・ツーの地位を維持していた。
経済発展を継続した日本、環境から守られた日本、また水処理を含む環境技術を持っている日本は、現在中国で注目されている。日本の都市発展、経済発展は、いろいろな意味で中国に前例を示している。鳩山特使の環境を重視し、「心と技を結びつけよう」という挨拶は、日本館に響き、会場の外の数え切れないほどの中国一般市民の心にも届いている。
中国と日本の間では具体的に何ができるかのだろう。日立製作所は都市の水環境に対するソリューションを中国地方政府に示している。三菱マテリアルは手持ちの鉱山汚水処理技術を中国に持ち込もうとしている。鳩山特使が強調している水資源についての両国の協力、行動は、すでに少しずつ推し進められているのだ。
千年前の遣唐使船と今日及び今後の環境問題への取り込みは、一見してなんの関係もないようだが、これこそ中国と日本の絶えず変化している交流と言えよう。交流が進めば進むほど日本は中国で注目される。ジャパンデーはその中でも、とりわけ人目を引く一コマと思われる。
「人民中国インターネット版」 2010年6月28日