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地下鉄の券売機。英語の表示もあるので外国人も利用しやすい |
上海の地下鉄の歴史は浅い。初の地下鉄「一号線」の一部が開通したのは1993年のこと。北京の1969年や天津の1984年に比べるとずっと遅い。しかしその発展はずば抜けて速く、2007年3月の時点で5本が開通しており、総距離は145キロにおよぶ(地上を走る都市鉄道も含む)。
ただ、朝夕の通勤・退勤ラッシュ時には相当込み合う。駅員が乗客を中に押し込まないと、ドアを閉めることができないぐらいだ。
これについて上海軌道交通建設指揮部弁公室の呉昕毅さんは、「もっとも利用客の多い一号線では、混雑を解消しようと具体的な対策を進めています。現在、6両編成だった電車を8両編成に移行している最中です。来年中には一号線の電車すべてが8両編成に移行する見込みです。これにより、輸送能力は30%以上アップします」と話す。
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朝の通勤ラッシュで込み合う地下鉄のホーム |
また、乗車マナーの問題も少しずつ改善しつつある。これまでは「降りる人が先、乗る人が後」という意識がほとんどなく、電車が来ればわれ先にと乗る人が大半だった。しかし、ホームと車内での表示や放送、駅員の呼びかけにより、「降りる人が先」の意識は人びとに根付くようになってきた。それでも乗客が多いときには、「降りる人が先」がまだまだ徹底されていない。「ラッシュ時にはボランティアが出て呼びかけるなどしていますが、徹底するのは難しい。やはり一人ひとりの意識が大切なのです」と呉さんは語る。
今後、地下鉄網はどう発展していくのだろうか。
2010年の万博までには、合わせて11本の地下鉄が開通する見通しだ。総距離は400キロに達する。最終的には、2020年までに17本、総距離780キロの地下鉄網建設を計画しているという。
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街や地下鉄のなかでよく見かけた「与文明同行、做可愛的上海人」 |
現在の一日あたりの利用客数は190万人。全市の公共交通を利用する人の13%以上を占める。中国国内でみればかなり高い割合だが、先進国に比べるとまだまだ低い。2010年までには30~40%を目指す。一日あたりの利用客数は500万~550万人だ。
万博期間中、来場者の50%が地下鉄を利用してやって来ると想定されている。「この要求にしっかりと応えることができる」と呉さんは自信をのぞかせる。
このほか、「人にやさしい地下鉄」を目指し、ほとんどの駅に身体障害者用のエレベーターを設けるなど、サービス面の充実にも力を入れている。
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万博会場予定地の住民の移住先にと建設された新しい団地 |
例えば、4号線の大木橋路駅の付近は病院が多い。市外からたくさんの人びとが病院へやってくる。そこで、地下鉄を出てから病院までの行き方を書いたメモなどを置いている。3号線のホームには「緑色通道」という特別乗車エリアを設け、高齢者や身体障害者などの乗車に便を図っている。車椅子も用意されていた。
しかしこういったサービスはすべての駅にあるわけではないし、それがうまく機能していないこともある。乗客の要求をいかに汲み取ってそれを体現し、普及していくかが今後の課題だ。
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