現在、外資系企業を含む中国のすべての企業が最も注目している問題の一つは、使用者の人事労務管理に大きく影響する『労働契約法』が施行された後、それに基づく新たな労働制度にいかに対応すべきか、ということだろう。
2007年6月29日、中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会は、『労働契約法』を採択し、公布した。これに関する中国での報道は、この法律は労働者側の権利を大幅に強化しているが、企業側の利益にも十分配慮し、調和のとれた法律になっているという基調のものが多かった。これに対し日本での報道は、労務管理や労使関係における使用者の負担が著しく増大することを強調するものが多いようだ。
例えば、『日中経済通信』は、7月2日の記事の中で、「中国 終身雇用求める『労働契約法』可決、来年から施行」「労使間で終身雇用契約を結ぶよう求め、違反した場合の雇用者への賠償金の支払いも義務付けた」と報道している。また『日本経済新聞』は「中国の全人代常務委員会で、労働者の解雇を制限する『労働契約法』が可決、成立した。2008年1月から施行する。事実上、労使間で『終身雇用』契約を結ぶよう求め、違反した雇用者に賠償金支払いを義務付けた」と報じた。
このように、『労働契約法』は「事実上、終身雇用契約を結ぶよう求めている」という報道に接して、ある日系企業の本社では、中国事情にさほど通じていない者から「中国でも解雇できなくなったのか」との声が上がり、中国における事業展開を案じているという。
ここにいう「終身雇用」とは、勤続10年、または2回連続して固定期間労働契約(期間の定めのない労働契約)を締結した場合において、労働者と無固定期間労働契約を締結する義務を課せられた雇用形態をいう。このような無固定期間労働契約の成立範囲の拡大は、使用者の頭を悩ませる原因の一つとなっている。
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