金融（２）

 グローバル化と中国の余剰労働力とが結びついて輸出が大幅に伸び、これにより2007年には貿易黒字が新たな記録をうち立てた。1～10月の貿易黒字額は2123億7千万ドルで、前年同期比59％増加した。これに対し中国人民銀行（中央銀行）は価格（レート）の調整と数量（外貨準備残高）の抑制のうちどちらか一方の調整しか行えなかった。しかし人民元レートが安定を維持している場合、大量の外貨準備を蓄積しないわけにはいかない。9月末現在、外貨準備残高は1兆4300億ドルに達した。

中央銀行はリスクヘッジ対策として外貨準備を放出し、巨額の人民元資金を市場に注入し続けた。また比較的大きな米ドルと人民元との利差を維持し、外貨のさらなる流入を抑制するために、国内で低金利を実施したため、資金の流動性がさらに激化した。こうして巨額の貿易黒字によってもたらされた資金の過剰な流動性により、市場には投資の急速すぎる伸び、貸付金の多すぎる増加といった現象が現れた。

金融（３）

流動する豊富な資金と低すぎる国内金利により、2007年には資産価値が全体的に上昇した。資本市場改革と進行中の都市化もまた株式市場や不動産市場の持続的上昇の重要要因ではあるが、株式市場の株価収益率（PER)は高すぎることや多くの都市における不動産価格の上昇ペースは国民の所得で受け入れ可能なレベルを大きく超えたことの背景要因は、やはり市場に出回る資金が過剰であり、投資ルートが不足気味で、資金配置が不合理であることだといえる。

07年に通貨当局はかつてないほど外部からの人民元切り上げ圧力にさらされた。持続的に高まる米国からの圧力のほかにも、米ドルの下落によりユーロ高が起こったため、下半期には欧州方面からの切り上げ圧力も増大した。しかし外貨管理局は人民元レートの安定調整を実現し、07年の上昇幅は5％を超えた。

中国人民銀行（中央銀行）の易鋼・行長助理（総裁補佐）によると、07年に起きたこうした重大な問題は、「成長に伴う悩み」ということができる。実際、現在の大幅な貿易黒字、高い貯蓄率、高まる人民元切り上げ圧力は、発展途上国にとっては得難い発展への条件だ。こうした本来は有利な条件といえる特徴が悩みになってしまう理由は、経済構造と体制環境とのアンバランスにある。このため、金融改革の深化とレート形成メカニズムの改善が、引き続き金融分野の中心的テーマとなる。