人民元レートの上昇傾向が鈍化した背景には、外的要因もあれば内的要因もある。
外的要因をみると、米ドルレートの上昇が人民元の対米ドルレート上昇幅を縮小させた。米ドルは下落傾向が6年あまり続いたことから、国際通貨としての地位に大きな影響が出たほか、米ドルを中心とした国際金融システムにも揺らぎが生じた。これを受けて米国のレート政策は変わりつつある。また一方では、低所得者向け(サブプライム)住宅ローンの焦げ付き問題の影響を受けながらも、今年上半期の米国経済は予想をはるかに上回る好調さだった。こうした様々な要因の下で、米ドルレートは8月に突如反発し、主要7通貨に対する加重レートは月初めの71.7218から75.0625に上昇し、上昇幅は4.66%に達した。
内的要因をみると、マクロ調整の任務調整も人民元の上昇鈍化の一因となった。年初以来、国際的な経済環境が日々厳しさを増し、外部ニーズが減少を続けている。国内の経済運営にも成長を制約する要因が数多くあり、一部の業界・企業はコストがはねあがり、経営が困難になった。マクロ調整では「一保一控」、すなわち「経済の安定的で急速な発展を維持し、物価の急激な上昇を抑制する」ことが第一の任務とされた。人民元の上昇が鈍化したことは、企業にとって、特に輸出企業にとって、相対的に安定したレート環境の下でコスト圧力を軽減するのにプラスになる。また一方的な上昇観測を沈静させ、ホットマネーの流入を抑制し、資金の過剰な流動性やインフレ
圧力を緩和するのにもプラスになる。
レート改革以来、人民元の累計上昇幅はすでに21%を超え、レート水準はますますバランスの取れたものとなってきた。このためレート上昇の歩みが鈍化したといえる。
|