金融危機が次第に遠ざかっているように思われる。米国経済は今年7月、0.1%のプラス成長に転じ、ウォール街は歓喜の渦につつまれた。だが中国銀行の朱民・副行長(副総裁、博士)は異なる見方をする。朱副行長はこのほど中国・欧州陸家嘴国際金融研究院のゲストとして、第24期中欧陸家嘴金融家サロンに出席した際、「危機は収束にはほど遠い、古い世界は再び戻ってはこない。各界は新たな世界に直面しなければならない」と発言した。「解放日報」が伝えた。
2008年以来、米国政府は巨大な資源を投入して市場救済をはかり、銀行への取り付け騒ぎを防ぎ、シティグループやAIGなどの金融機関を倒産から救った。銀行業界の共通認識では、今回の危機で銀行業界の損失は3兆2千億ドルに達した。このうち、世界で実際に支出された損失は1兆6千億ドルで、まだ半分に過ぎないが、それでも世界は大混乱に陥っている。世界の銀行の資産を合わせても3兆3100億ドルに過ぎず、1兆6千億ドルの不良債権がまだ処理されていないということは大きい。朱副行長によると、危機がすでに過ぎ去ったとみるのは、無謀な楽観主義で自らを慰めようとすることにほかならない。世界はもはや実体経済の16倍にも相当するバーチャル経済を必要としてはおらず、金融業界も昔に戻ることはなく、金融業界は「てこ入れ」をすべく努力することしかできない。シティバンクの資産規模は2兆2千億ドルだが、今後は分割を余儀なくされる。3年後には資産規模2兆2千億ドルの大型銀行グループから、1兆2千億ドルの銀行に縮小し、中国銀行を下回る規模になる見込みだ。これからのシティバンクはこれまでのシティバンクではなく、昔に戻ることは決してありえない。バンク・オブ・アメリカなどの有名銀行もみな規模が半分ほどに縮小する予定だ。ある統計データによると、米国の銀行の利益上位1千行の利益総額は、2007年の2700億ドルから08年はマイナス910億ドルに激減した。欧州の銀行でも3456億ドルからマイナス162億ドルに減少し、アジアの銀行だけが08年は1460億ドルの黒字を達成した。今後どの銀行がよい銀行になるのかは皆目見当がつかない。
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