科学技術の革新を奨励
こういった背景から、金融危機発生後もアメリカは研究開発費を大幅には削減していない。議会が公布した『2009年アメリカの復興と再投資法案』の草案には、133億ドル増額された科学技術投資が計上されており、その内訳は研究開発そのものに99億ドル、研究開発設備に34億ドルとなっている。この支出は主に、アメリカ競争力強化計画を重点的に支援する、アメリカ国家科学基金・エネルギー部科学事務所・国家標準技術研究所という三機関と国立健康研究所へのものであり、この三機関において増大した経費の大部分は研究開発に使われる。オバマ氏が大統領選挙において約束したアメリカ競争力強化計画における、7年から10年で三機関における物質科学研究費と作業経費を倍増させるという目標が実現することになった。
また、アメリカは国家にとって戦略的価値のある新興産業に巨額の投資を行っている。税収補填などの手段によってレバレッジ効果を用い、これらの分野に投資する社会資本を捻出している。さらに、民間の宇宙関連プロジェクトを設ける、官民合同経営の企業を設立するといった一連の取り組みもある。
このほかには、クリーン石炭技術のビジネスモデルを模索したり、個人のブロードバンドサービス業界への投資を奨励したりしている。これらは、民間の団体や個人を科学技術の開発や利用に参与させることを念頭に、アメリカの革新力と経済成長を保持していくことを目指している。