一時静まっていた人民元の為替相場に関する中米の「言い争い」に再び火が灯り始めている。IMFやインド、ブラジルを含む多くの国や国際機関までも人民元の切り上げは「自国にも他国にも利益がある」と口を揃え、順に圧力を掛けている。中国工業情報化部の朱宏任スポークスマンは22日、「為替相場の動きは経済と関連業界への影響が考慮されている」と述べた。為替相場の動きが中国の関連業界、特に労働集約型産業に深刻な衝撃をもたらす可能性があるためだ。
▽各自の思惑
米商務省は21日(北京時間)、中国の為替相場措置が違法な貿易助成であるかどうかの判断を先送りした。先日も米財政省が今月15日に発表を予定していた「主要貿易対象の国際経済と為替相場政策の状況報告」を延期しており、米政府は今回また人民元の為替相場問題についての判断を先送りした。
米側の人民元為替相場問題に対する態度は控えめになりつつあるが、中国への圧力はまだ減少していない。
20カ国・地域(G20)の財務相や中央銀行総裁がワシントンに集い、金融規制改革についての議論を受け、インドやブラジルの中央銀行総裁が思いがけず人民元為替相場問題に対し強い口調の声明を発表した。
ブラジル中央銀行のメイレレス総裁は「さらなる元高が世界経済の均衡を取るための絶対的な鍵となる」とし、インド中央銀行のスッバラーオー総裁も「人民元は低く評価され、インドを含むほかの国に負担をかけている」と指摘した。
シンガポールの李顕竜(リー・シェンロン)首相は先週、人民元の切り上げは中国の利益にも合致するとし、「すでに危機は過ぎた。中国は自国のために為替相場の柔軟性を高め、米国や他のグローバルパートナーとの衝突を避けたほうがいい」と発言した。
興業銀行の魯政委エコノミストは「大声で怒鳴り散らさなくなったからといって米国が人民元切り上げを迫る計画を放棄したわけではない。ただ作戦を変更したに過ぎない。IMFは最近頻繁に人民元の切り上げを説いている。今のIMFは組織的に米国の関与や影響を受けずにはいられない」と率直な見解を示す。中国のブラジルやインドからの輸入額は増加傾向にある。特にブラジルからは大量の鉄鉱石を輸入しているため、人民元の切り上げはこの2カ国にとって大きな利益があるのだ。また、シンガポールの今年の経済成長は予想を上回るものだった。ホットマネーが大量に同国に流れ込み、同政府の通貨政策は難航した。同国の人民元への「砲撃」は圧力の転嫁がしたいに過ぎない。