▽再び変動相場に逆戻り?
「ここ数日、国内のドル/人民元のスワップポイントは拡大している。期間1年の先物レートが6.7000を割り、上昇幅が2%以上に達するのを暗示している。国内の資金の流れをみると、先物レートの動きは国内のドル不足に関係しているが、依然として人民元切り上げに賭ける声が高まっている」とシンガポール華僑銀行の謝棟銘アナリストは分析する。
「人民元相場の外からの圧力はこれまでにもあったが、人民元が切り上がることはなかった。人民元の切り上げは最終的に国内の経済情勢によって決まる」とスタンダードチャータード銀行の李氏は指摘する。「少なくとも中国経済をみると、経済の回復に伴い、人民元の為替相場はドル離れし再び変動相場に戻っている」。
英国の投資銀行であるバークレイズ・キャピタル社中国経済研究部の彭文生主任は、日増しに上昇するインフレなど勢いのある国内の経済データが、より柔軟な為替相場の実施に向け経済環境を強化しているとの見方を示す。
一方で朱宏任氏は、為替相場の変動は輸出業、特に労働集約型の業界に対して影響が大きいことを懸念する。中国の軽工業や紡績業、電子・機械工業などの輸出は工業輸出の70%を占め、7000万人以上の雇用確保につながっている。為替相場の動きがこういった業界の経営や雇用にマイナスの影響をもたらすほか、船舶や大型設備などの輸出額が大きく、納品周期がかかる業界にも為替相場による損失をもたらし、企業の受注に影響する。
これについて魯氏は、中国は5月から7月にかけ為替相場制度改革を改めて始動し、一方で次第に強まる国際的な圧力に対応し、もう一方で国内のインフレ圧力が高まるにつれ、人民元切り上げを受け入れやすい環境が整うと予測する。しかし、為替相場制度改革の最大の目玉は為替相場の変動幅を拡大することだが、年内の上昇幅は限定的だと考えられる。
李氏も、人民元が年内に徐々に切り上がるだろうが、その上下幅は現在の1日数ポイントから十数ポイントに拡大する程度だと指摘する。05年に人民元が一気に2%切り上がり相当数の輸出企業が適応できなかった過去の経験から一度に2%切り上げられる可能性は低いが、1ポイント以下の切り上げであれば輸出企業に対する影響はそれほどないという。
「人民網日本語版」2010年4月23日