(3)ますます激しくなる中米貿易の戦い
年初以来、米国の対中国輸出が急激に増加している。米商務省のまとめた統計によると、今年1-2月の米国の対中商品輸出は前年同期比55.2%増加し、増加率は輸出全体の増加率17.3%の約3倍に達した。オバマ大統領が打ち出した「輸出を5年で倍増」とのスローガンは、対中貿易で前倒しで達成できる可能性が出てきた。
だが、こうした状況にあっても、貿易保護主義を抑制するとの承諾に反して、米国は昨年9月から、中国の対米貿易に対する各種の貿易制裁措置を実施している。米政府は9月11日、中国が米国に輸出する乗用車および小型トラックのタイヤに対する課税率を同月26日から引き上げ、今後3年で価格に応じて35%、30%、25%まで引き上げることを発表した。その後さらに、中国産シームレス鋼管、油井管、銅版紙、鋼ワイヤー層板、鉄鋼製ドリルパイプ、贈答用箱、包装リボンなどに対し、反ダンピング調査や反補助金調査を発動したり、反ダンピング税を課したりした。これに対し中国は、米国産の鶏肉、自動車、ポリ塩化ビニル、ポリエステル繊維などを対象として報復措置を打ち出した。今年3月からは、対中国貿易戦を為替の分野にまで拡大しようとしており、米財務省はかねてより、人民元レートは低く見積もられており、中国を「為替操作国」に認定するかどうかを議論すべきであると主張し続けている。中国国務院の温家宝総理は、その直後に開催された毎年一度の両会(全国人民代表大会と全国政治協商会議)で、人民元で実行しているのは管理された変動相場制度であり、人民元の貨幣価値は低く見積もられていないと発言。また人民元は外からの力に強制されて切り上げられることはないとの姿勢を明確に打ち出した。これに対する反応として、米両党議員130人がオバマ大統領に対し、中国の相場に対し行動を取るように要請した。またこれに対する反応として、中国商務部は断固とした姿勢を打ち出した。米財務省のガイトナー長官は4月3日、「為替操作国」問題の決着を遅らせると宣言せざるを得なくなった。
(4)世界銀行の作業が飛躍 IMF改革に進展なし
今年4月、世界銀行は先進国から発展途上国へ3.13ポイントの投票権を移譲することを可決した。これにより発展途上国全体の投票権比率は47.19%に上昇し、中国は2.77%から4.42%に上昇して世界3位となった。国際通貨基金(IMF)の議決権改革はこれまでに実質的な進展がないが、新興市場と発展途上国の占める割合を少なくとも5ポイント引き上げ、現在の43%から48%以上とすることで、内部のコンセンサスを得ているという。
世界金融危機により、国際金融システムと国際金融秩序の改革がIMFの議事日程に上がった。だが一票で否決する権利を有することや米ドル本位制といった米国の覇権的地位を改革することは、まだしばらくは難しいとみられる。中国は改革に積極的に参与すると同時に、時勢を慎重に見極める必要もある。特に人民元の国際化問題で焦ってはならない。
(筆者は新華社世界問題研究センターの孫時聯氏と南開大学経済学部の熊柴氏)
「人民網日本語版」2010年5月17日