中国のカード族が語る海外でのカード利用の秘訣は、カード決済機関「中国銀聯」のシステムで決済を行い、外国為替手数料を無料にすることだという。だがこのほどメディアが伝えたところによると、ビザインターナショナルは加盟金融機関に文書を送り、今年8月1日以降に大陸部外でビザと銀聯との提携カードを受け付ける際には、ショッピングであれ、現金自動預け払い機(ATM)での現金引き出しであれ、銀聯の決済システムを使用しないよう要請した。同システムを使用した場合、受け入れ金融機関に罰金を科すとしており、初回に5万ドル、その後も使用が続いた場合は一月あたり2万5千ドルを徴収するという。これにより提携カードの所有者は今後、銀聯が提供する外国為替手数料の無料サービスやその他の付加価値サービスを受けられるなくなる。
▽選択権なくなり、決済コスト増大
ビザの受け入れ金融機関に対する強制的措置が発行すれば、提携カード所有者は海外ではビザシステムでの決済を余儀なくされることになる。ビザの決済システムは米ドル建てで、海外でカードを使用した場合、まず現地通貨から米ドルに換算され、さらに米ドルから人民元に換算されて決済されるため、利用額の約1-2%の外国為替手数料を余分に支払わなければならず、さらに3種類の通貨の換算過程で為替レートによる損失やレート変動のリスクを負わなければならない。銀聯システムで決済を行えば、人民元と現地通貨との直接の換算が可能であり、外国為替手数料が無料になるというメリットがある。
北京師範大学金融研究センターの鐘偉主任によると、ビザの行為は実際のところ提携カード所有者の支払いルート選択権を一方的に剥奪するものであり、提携カード所有者の大陸部外でのカード利用コストを直接に増大させるものだという。
ここ数年来、中国人の海外でのショッピング額が急速に増加しており、中国人観光客は旅行目的地の商店で売上を伸ばしてくれる存在として大人気だ。中国観光研究院が今年4月に発表した「中国海外観光旅行発展年度報告」のデータによると、中国人の2009年の海外旅行での消費額は総額420億ドルに達した。ビザが2009年9月に発表した「中国観光業展望」によると、中国でのカード発行枚数は5800万枚を突破し、同期の中国人民銀行(中央銀行)の支払いシステム運営報告では、09年第3四半期(7-9月)末現在のクレジットカード発行枚数は約1億7500万枚に上り、ビザ・銀聯の提携カードの市場シェアは33%に達した。これらのデータを踏まえ、外国為替手数料を1.5%として計算すると、ビザは今回の行動により提携カード所有者に巨額のコストを直接上乗せすることになる。