「兼併重組」により中国最大級の鉄鋼企業となった河北鋼鉄集団の唐山鋼鉄公司薄板工場 |
「兼併重組」の実態
さて、中国の経済構造調整の成否を握るのは、「兼併重組」の行方と戦略的新興産業の発展にあるといっても過言ではないでしょう。
増・改築に当てはめると、「兼併重組」は改築、戦略的新興産業は増築といえます。「兼併重組」は、「雨後の筍」状況にあります。例えば、2009年、機械、自動車、非鉄金属、電子情報などの業界では50余の大型の「兼併重組」が実施されました。
鉄鋼業では、宝鋼集団公司による寧波鋼鉄公司、山東鋼鉄集団による日照鋼鉄公司、首鋼総公司による長治鋼鉄公司の「重組」が推進され、また、「兼併重組」により中国最大級の鉄鋼企業となった河北鋼鉄集団は、統一管理、統一経営を実施するなど産業の高度化、企業内部の効率的経営(省エネ、環境配慮を含む)が実行されています。今や、中国には1000万トン以上の粗鋼の年産能力をもつ鉄鋼企業が九社、うち、宝鋼集団、武鋼集団、華北鋼鉄集団は年産能力3000万トンに達しています。
また、中国アルミ、中冶集団、五鉱集団などは、従来あまりなかった省・自治区の壁を超えた「重組」を実行しています。
こうした現実こそ、近年積極化している中国企業による鉄鋼など海外資源関連企業のM&Aや資源開発の背景にあるのです。
因みに、自動車業界では、百万台の年産能力を有する企業が五社あるとされます。こうして、生産販売で世界第一位を記録した中国自動車業界の国際競争力が高まれば、近い将来、日本の道路を走る「メイド・イン・チャイナ」車をよく目にするようになるかもしれません。
このほか、「兼併重組」などによる産業構造調整は、セメント、平板ガラス、電解アルミ、コークス、カーバイド、鉄合金、製紙、食品(アルコール飲料、化学調味料、レモン酸など)などの多くの業界で積極的に推進されています。
環境にやさしい新興産業の発展
戦略的新興産業とは、高次元デジタル工作機械、ハイブリッドカー、大型航空機などの先進的製造業やサービス・アウトソーシング、電子ビジネスなどの生産性サービスに加え、情報・インターネット(3G、次世代インターネットなど)、新エネルギー、省エネ・環境保全、新素材、新医薬、バイオ栽培、などの関連産業を指しますが、いずれも環境にやさしく、人民生活の質的向上に資する21世紀の産業です。
恐らくこうした新興産業の発展は、「兼併重組」などによる既存産業の高度化と同様に、21世紀の中国経済の国際競争力向上の命運を握っているといえます。
企業間での「兼併重組」、戦略的新興産業の育成・発展でリフォームされた中国経済が、世界経済の「成長と制約」の打開にどう立ち向かうのか、その責任と真価が問われているといえるといってよいでしょう。
「人民中国インターネット版」より2010年6月17日