統計方法を見ると、中自研の売上台数データは登録台数に基づいているため、販売代理店による実売台数をよく反映している。中国自動車工業協会の売上台数データは、卸売・小売の両方をカバーしたデータになっている。このため、中自研と中国自動車工業協会のデータの違いは、小売と卸売の違い、と理解することができる。さらに小売と卸売の台数差は、実は販売代理店の在庫台数を表している。この卸売-小売の台数差が4月以降上昇しているのは、販売代理店の在庫数が膨れ上がっていることを意味している。実際に、販売代理店が、抱える在庫を解消するために、第2四半期以降、販売価格の値下げといった現象もちらほら見られるようになっている。
自動車消費刺激政策により生産能力が拡大されている低排出ガス車は、今年に入ってから、その政策が打ち切られ、更に2回目の景気落ち込みへの懸念も重なり、人々の自動車消費に対する意欲は消極的になりつつある。中自研のデータによると、6月度までの国内在庫数はすでに130万台に達している。このような状況で、自動車メーカの多くが4月以降、在庫を抱えたまま、減産を始めている。それに対して、値下げ予想により、消費者の買い控え傾向が高まっており、売上台数の落ち込みがより顕著になっている。このため、在庫による負担は、自動車メーカから、販売代理店へと移行している。卸売-小売の台数差が月ごとに大きくなっているのは、在庫の負担が、小売側へと動いている証拠に他ならない。
同じ市場、異なる売上データに矛盾はない。売上台数のデータが中自研と中国自動車工業協会で異なるのは、市場分析の角度が異なっているからに過ぎない。卸売-小売の売上台数差の拡大は、販売代理店が抱える在庫数が増え続けているという今の厳しい景気状況を別の角度から反映している。メーカの減産および値下げによる販売促進により、販売代理店が抱える在庫の負担は、販売のピークを迎える第4四半期において、軽減されると見込まれている。この間に変動する中自研と中国自動車工業協会の売上台数データの差は、過剰在庫の負担や業界の景気を判断する指標の一つになるかもしれない。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2010年7月16日