中国経済は「大局未変、政策安定、調整加速」という12字にまとめることができる。注目したいのは、経済転換の成果がすでに現れてきていることだ。まず、沿海地域は経済転換により新たな道を歩み始め、ハイテク技術や新管理規定によって伝統サービス業から現代サービス業へと発展している。次に、広東や上海一帯の伝統産業は非常に速いスピードで内陸部に移行している。第三に消費が急成長の段階に入った。中国経済は現在労働所得の上昇に直面している。その原因は、農村の余剰労働力が相対的に少なくなってきたためで、長年右肩下がりだった国内総生産(GDP)に占める労働所得の割合はもうすぐ逆転しようとしている。だが、労働所得が上昇しなければ消費も伸びない。
中国経済は今後10年は9%以上の成長率を維持する黄金の成長期が続くものとみられる。ここでは、次の4つの要因に注目してみたい。
第一に都市化。中国は都市化が加速する段階にある。政府の発表では、中国の都市化率は46.6%で、同じような経済発展段階にある国より約11ポイントも下回るものの、これからさらに伸びる見込みだ。中国ではいたるところで都市化の加速を見て取ることができ、新たな消費や建設につながっている。
第二に大陸部の急成長。「中国は低成長の段階に突入した。韓国や日本のように成長がストップする」という声があるが、中国には多くの内陸部の都市があり、多くの遅れた都市がある。まだたくさんの内陸部市場で開発の可能性がある。
第三に生産能力の更新。これは厳しい課題であり、発展のチャンスでもある。低炭素経済の発展は避けて通ることはできないが、どうすればいいか?根本的には生産能力を更新し、エネルギー消費量の大きい成長モデルを転換させ、遅れた生産能力を淘汰することだ。エネルギー消費量の大きい5つの産業が生産能力を基本的に世界の先端レベルに更新できれば、中国のエネルギー消費は毎年10%削減され、二酸化炭素の排出量も10%削減できる。そうなれば新たな投資を刺激することにつながる。生産能力を毎年5%更新できれば、GDP成長率を少なくとも2.5%引き上げることができる。
第四に中国の公共財政は健全であり、中国には政府主導のモデル転換政策を実施する上で非常に大きな可能性がある。ある試算によると、中国政府の資産額はGDPの約120%、政府の負債額はGDPの約80%に相当する。貸借対照表にもキャッシュフローにも問題はなく、財政の可能性は大きく、財政政策を少し緩めれば、非常に大きな経済推進効果を上げることになる。
この4つの要因から中国には非常に大きな経済成長の潜在力があるといえる。当然、その前提として政府の政策はより積極的で、より調整措置に力を入れ、市民に目に見え、肌で感じる恩恵を与えなければならない。今後10年で高齢化や労働不足などの問題が生じ、中国の成長率は落ち込み、資産価格が大幅に縮小するという声もあるが、私はこの観点には同意できない。高齢化が問題だとは思わないし、中国の人口ボーナスはまだ終わっていない。人口問題があるとすれば、不合理な制度が一部の年齢がやや高い人の労働意欲を削いでいるのであって、これは改革によって解決できる。(清華大学中国・世界経済研究センター主任 李稲葵)
「人民網日本語版」2010年8月2日