米国のある市場研究会社はiPodのメディアプレイヤーについて分析し、その中の部品の製造業者とコスト、利益について研究した。その結果は人々を深く考えさせるものだった。
研究で、米国での小売価格が299ドルのiPodは卸売り・小売コストが75ドル、アップル社の収入は80ドル、すべてにかかるコストは144ドルであることがわかった。この144ドルのコストのうち、ハードディスクとディスプレイだけで日本企業の付加価値は93.39ドルに達し、その大部分を東芝が占めている。その他のコストには米国や日本、韓国の企業が生産する部品、技術ロイヤルティーなどが含まれる。しかしiPodの組立てを行う中国が受け取るのは、わずか数ドルの加工費だけだ。
これはまったく驚くことではなく、世界貿易機関(WTO)のパスカル・ラミー事務局長も今年6月に仏紙「ル・モンド」の独占取材に応じた際に同様の見方を示している。ラミー事務局長は、「iPodを例に挙げると、これは中国で製造されたものだが、そのコストは5%が中国の従業員給料、15%が米国の技術ロイヤルティー、40%が日本の付加価値となっている」と述べた。
いわゆる「iPodの警告」に再び触れたのは、国内外メディアが近ごろ中国経済が日本を超えて世界第2位の経済大国になることを大々的に報じているからだ。中国の人たちは誇りと喜びにひたっているが、深く注意する意識を持ち続けるべきである。国内総生産(GDP)にしても、貿易の統計データにしても、これらが誤った方向に導くこともある。GDPと貿易データを分析すれば、世界の産業バリューチェーンにおいて中国がまだ最も低い位置にいることに気付くだろう。中国は世界が羨むようなGDPと輸出の数値を得たが、アップルや東芝のような世界的な大手企業はもっと多くの利益を得ている。