地方から北京にやってきた呉宇さんの机の上には3枚の写真が飾られている。左の写真は天安門広場で撮影したもの。まだ幼さを残した呉さんが恥かしそうに笑っている。7年前、大学を卒業して一人で上京し、必死にがんばっていたころの写真だ。いまはもう、ある企業の中間管理職になっている。住まいも、最初は他の人と共同で借りていたが、ローンを組んで3LDKのマンションを購入した。
右の写真は結婚写真。妻は同郷の人で、呉さんより2年遅れて北京にやってきた。ある集まりで知り合ったのである。二人にはまもなく2歳になる子どもがいる。
真ん中の写真は一家全員の写真。自分と妻と子ども、そして呉さんの両親も写っている。すでに定年退職した両親は孫の面倒をみるために、故郷の家を人に貸して北京に出てきた。
7年前、一人で北京にやってきた呉さんであるが、いまは家族5人で暮らしている。呉さん一家の変化は、北京の人口変化の一つの縮図に過ぎない。
「北京都市全体計画(2004-2020年)」は、2020年時点の北京市の総人口を1800万人程度に抑えるとしている。しかし、北京市人民代表大会常務委員会の調査研究によると、2009年末時点の北京市の常住人口は1972万人、そのうち北京市の戸籍人口は1246万人、半年以上居住している流動人口は726.4万人。一家を挙げて北京に引っ越してくる割合が年々高まり、41.2%に達している。
一方、北京市統計局が1月に発表したデータによると、2009年末時点の常住人口は1755万人。しかし第11次5カ年計画が要求する2010年末時点の常住人口抑制目標は1625万人だ。ある専門家は、「人口抑制目標をすでに超過し、北京は人口爆発の危機に突入している」と警鐘を鳴らす。
呉宇さんも北京の人口増加に関する報道は耳にしているが、1625万、1800万、或いは1972万という数字についてはいまいちピンとこない。しかし朝晩の地下鉄のラッシュ、病院での順番待ち、交通渋滞に遭遇すると、こういった数字を思い出し、「どうしてみんな北京にやってくるんだろう」と思うという。