第四に、円相場は大幅な変動が経常的に生じること。1973年―2009年に、日本円の対米ドル相場は年間10%を超える変動が17回も起きており、1985年から1986年には、40.5%という変動幅が記録されている。外貨リスクを防ぐため、多くの日本企業が海外経営の過程で、米ドルを中心とする集中的な外貨リスク管理体制を構築するとともに、専門の技術人材を用いて外貨のリスクヘッジ手段をうまく活用することで、管理コストを削減している。
この体制の構築によって円は国際化の好機を逸しただけでなく、米ドルの規模の経済とその慣性効果を助長させる形となった。言い換えれば、日本の海外直接投資が多いほど、日本企業が海外で形成する生産貿易ネットワークは発達し、日本円の国際化にとってはかえって不利になる。
今回の金融危機がもたらした国際化の好機を日本円がいつまでもつかめないでいる背景には、まさに以上のような要因がある。これは中国を含めた各国が熟考するに値する問題である。
用語解説 裁定取引通貨
ある国の金利が下がった(ひいては0に近づいた)とき、海外の投資家または自国の国民がその国の通貨を借り入れまたは使用して、金利が高いその他の通貨(または高金利通貨で決済した債券、株式など)を買い入れ、利ざやを稼ぐ取引を裁定取引といい、この種の通貨を裁定通貨という。
「人民網日本語版」2010年9月19日