21世紀、レアアース恐慌は現実になるのか?

21世紀、レアアース恐慌は現実になるのか?。

タグ: レアアース

発信時間: 2010-11-16 17:31:09 | チャイナネット | 編集者にメールを送る

「レアアースは本当にそこまで希少なのか?」米外交専門誌「フォーリン・ポリシー」はこの質問に対し「採掘する意思がある限り、レアアース恐慌に怯える必要はない」と述べた。多くのレアアース元素はそこまで希少ではなく、普遍的に存在している。なかには鉛よりも埋蔵量が多いものさえあるほどだ。ライターの発火石はレアアースからできており、ガス灯は1世紀近くもレアアースが使われている。現在、市場で供給量が減少しているのは経済と環境の影響が大きいのであって、決してレアアースが希少だからではない。独「フランクフルト・アルゲマイネ」新聞は「幸運なことに、世界はレアアース不足ではなく、『採掘不足』なだけなのだ」と楽観視している。

レアアースの埋蔵量は少なくないが拡散している為、採掘が困難でコストも高い。更に、コストに見合うだけの採掘量が得られる鉱床も限られている。7月、米エネルギー政策アナリストのマーク・ハンフリス氏が国会に提出した世界レアアース分布地図で、各国のレアアース埋蔵量が世界全体に占める割合はそれぞれ、中国が36%、ロシアが19%、アメリカが13%、オーストラリアが5.5%である。レアアースの埋蔵量が比較的多い国は他にも、インド、ベトナム、ブラジル、カナダなどが挙げられる。それ以外では、東南アジアのマレーシア、インドネシア、東北アジアの朝鮮、中東のアフガニスタン、サウジアラビア、トルコ、北欧のノルウェー、グリーンランドやバルト海沿岸の国々、アフリカの南アフリカ、ナイジェリア、ケニア、タンザニア、ブルンジ、マダガスカル、モザンビーク、エジプトなど多くの国や地域に採掘可能なレアアース鉱床が存在する。なかでも規模が大きいのは、中国、アメリカ、オーストラリア、ロシア、インドとバルト海沿岸の国々である。しかし、今現在、大々的に採掘を行なっているのは中国だけなのだ。中国のレアアース生産量は世界全体の97%を占め、ロシア・アメリカ・オーストラリアの生産量はゼロに等しい。

米「ワシントンポスト」紙は、中国がレアアースの採掘を牛耳るのは一時的だと述べている。1990年代、アメリカはレアアース市場を先導していた。その後、中国から安価なレアアースを購入できるようになると、多くの国は自国の鉱山を温存するため閉鎖し始めたのだ。カリフォルニアのマウンテン・パス鉱床は世界最大のバストネサイト(バストネス石=軽希土類)鉱床で、埋蔵量も450万トンと豊富であるが、2003年に採掘休止している。アメリカはモリブデン鉱山会社を再起動し、マウンテン・パス鉱山の採掘を再開する予定である。1年間の生産量は1万トン以上になるとの見込み、2,3年以内には生産が開始されるだろう。モリブデン鉱山会社は「2012年には、アメリカのレアアース生産量を2万トンに引き上げ、中国の半分の価格で市場の1/6を独占するだろう」と発表した。

オーストラリアもまたレアアースの資源大国であり、モナズ石などのレアアースを多く含む鉱物資源が豊富である。1994年、放射性廃棄物の処理などの問題から、モナズ石鉱山の採掘を中止した。オーストラリアでは環境保護が重要視されており、採掘可能なモナズ石の大半が東海岸の環境保護区や国立公園内に埋蔵されている為、開発許可が下りないのだ。独「ディ・ヴェルト」新聞は「中国の輸出制限が続けば、オーストラリアは数年後には世界の主要なレアアース生産国の一つになるだろう」と報じた。また、レアアース業界で投資を行なっている者のなかには「オーストラリアはレアアースの輸出において、石油でいうサウジアラビア的な存在になるだろう」とまで予測している。

米外交専門誌は9月、南アフリカ、カナダ、オーストラリアなどの会社が競って自国のレアアース鉱山の開発を始めたと伝えた。これに対し「ニューヨーク・タイムス」紙は、「どの国の開発計画もリスクが高く、経済的にどれほどの見返りがあるのかが問題である」と言っている。中国が現在、輸出を制限している為、レアアースの価格は上昇しているが、もし中国が突如考えを変えて価格を下げたとしたら、これらの会社は揃って倒産に追い込まれるという危険性が潜んでいるのである。日本の「週間ダイヤモンド」は11月、「中国へのレアアース依存から抜け出すためには様々な障害を乗り越えなくてはいけない」と述べた。自動車生産業界で言えば、エコカーの生産に必要なレアアース「ジスプロシウム」を低コストで採掘可能な国は中国以外にはないと言っても過言ではない。これに対し、中国現代国際関係研究院経済安全研究センターの江涌主任は「レアアースには放射性物質が多く含まれているため、採掘が非常に難しい。短期間で他の国が中国に取って代わるのは至難の業である」と述べた。アメリカのレアアース産業の成果が出るのには15年かかるとの悲観的な意見もあり、中国にはまだ当分太刀打ちできないだろう。

「中国網日本語版(チャイナネット)」2010年11月16日

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