(3)積極的な財政は構造調整に重点
2011年も引き続き積極的な財政政策が実施される見込みだ。経済の安定傾向が引き続き顕在化するため、2011年には財政赤字の規模が1兆元を割り込み、2010年の1兆500億元を下回る可能性がある。経済のストックの規模が拡大することを考えると、2011年の赤字率は2-2.5%に低下することが予測される。積極的な財政政策の重点は、経済成長の土台を固め、十二五のよいスタートを切ることのほか、経済の構造調整をより明確に重視することにある。インフラ建設では新規着工プロジェクトへの投資の伸びが鈍化し、保障性住宅、西部大開発、戦略的新興産業などへは引き続き大量の投資が行われる見込みだ。
(4)「三率」がそろって変動
2010年には金利、預金準備率、為替レートの「三率」がいずれも変動した。2011年もまた三率がそろって変動することが予想される。インフレ観測を一層抑制し、「マイナス金利」を緩和するため、2011年には中国人民銀行(中央銀行)が預金金利と貸出金利を適宜引き上げる可能性がある。預金準備率の調整は過剰な流動性を回収する役割を発揮するとみられ、必要であれば、2011年には預金準備率が20%前後引き上げられるとみられる。
2011年には人民元レート形成メカニズムの改革が引き続き緩やかに推進される見込みだ。人民元の適度な上昇は外貨収支のバランスを改善し、輸入型インフレを抑制するのにプラスになる。2011年には人民元レートが3%前後上昇するとみられる。
(5)所得分配改革プランが登場
ここ数年来、中国の所得分配の格差が拡大しており、こうした状況が重視されるようになっている。所得分配を調整すれば経済の構造調整にプラスになり、発展の成果の恩恵がより多く国民生活に及ぶようになる。所得分配の関係を改善し、国民収入における個人収入の割合を高め、第一次分配における給与所得の割合を高めることが、今後カギになるとみられる。2011年には所得分配改革プランが正式にうち出される予定で、具体的な措置としては、高・中・低所得層の給与水準をそれぞれ引き上げること、独占業界の給与総額と給与水準のダブル調整政策を改善すること、所得分配に対する税金の調整力を強化することなどが考えられる。