日本の地震が引き起こした原発事故の影響は、地震と津波の被害をはるかに超えている。原発事故は多くの国の原子力政策に影響を与えたが、中国の原子力政策が大きく変わることはなさそうである。
中国は原子力を長期的な発展の重点に置いている。「十二五(第十二次五ヵ年計画:2011-2015年)」計画によると、中国は2015年までに、原子力発電施設40基を新たに建設するという。中国政府は、日本で発生した原発事故の具体的な状況と経験に基づき、今後のエネルギー政策を見直し、原子力発電に関しても、管理や運営などを強化すると発表した。しかし、筆者は、今回の原発事故によって、中国がエネルギー政策の大まかな方針を変更することはないと考えている。中国は今後も原子力を国家エネルギー政策の重点項目と位置付け、優先的に発展させるに違いない。
長期的な視点で見ると、常に抱えているエネルギー供給不足の問題を緩和し、温室ガス排出削減目標を達成するためには、原子力発電の発展が不可欠である。現在、中国は経済モデルの転換を加速させているが、石炭など化石燃料では電力供給不足や省エネ、温室ガス削減の問題を解決することは難しく、風力発電や太陽光発電なども地理的・気候的条件の制約を受けるなどの問題を抱えている。これらの発電手段は、経済発展の過程で必要となる電力の補充や調整の役割は果たすが、国家を支える主要な発電手段になるのは難しい。そのほか、水力発電はすでに飽和状態となっており、開発の余地がかなり小さくなっている。中国が選ぶべき道はやはり、クリーンかつ高効率な原子力発電しかない。