危機の転嫁を狙う先進国
今回の先進国の全般的危機が一朝一夕で形成されたものでないことは明らかである。統計によると、日本では4月末までに、地震の影響で倒産した企業が66社、総負債額は人民元にして30億元に上るという。これを地震だけのせいにするのは不可能である。日本の著名歴史家、川北稔氏は震災後、18世紀に大地震に見舞われたポルトガルと今回の日本を重ね合わせた。一方、アメリカ人はビンラディンの死に歓喜しているが、10年間溜まった「対テロの負担」は今もアメリカを圧迫している。オバマが再選したとしても、失業者200万人という状況は改善されないだろう。先進国が回復に向かうまでの道のりはまだ遠い。そして、暗い時代を乗り越えたとしても、新たな時代が到来するとは限らない。恐れるべきはすべてが手遅れになっていることである。
このような変動に直面しても、先進国は反省の色を見せていない。それどころか、これまで通り我が物顔な振る舞いを続けている。これも今回の全般危機の特徴である。東日本地震発生後、政府と企業の対応の遅さが批判を受けた。福島第一原発の事故は世界を放射能危機に巻き込んだ。事故から2ヶ月、原発の事故レベルは7まで引き上げられたが、政府の設置した事故処理対策機関はいつまで経ってもそれらしい動きを見せていない。一方、アメリカはさらに傲慢である。オバマの政権掌握後、人々はまだ「スマート・パワー」の内容を目にしていない。目にするものといえば、ブッシュ政権から続く「以暴易暴(暴力を持って暴力を制す)」である。ビンラディンの死もその典型だといえよう。このような強硬な姿勢は世界の各勢力にも影響を与えるに違いない。保守主義が再び台頭すれば、対テロ戦争の正当性、合法性や、アメリカとテロ組織間にある終わりのない対抗関係は非難の的となる。人々が懸念しているのは全般的危機が深化してしまうことだ。
反省しないだけでなく、先進国は危機にも耐えられなくなっている。今後、先進国は「危機の転嫁」を行う可能性が高い。5月9日、釣魚島(日本名:尖閣諸島)が中国に占領されるシナリオを日本の防衛省が作成していたことが判明した。このようなシナリオが震災後に明らかにされるのは偶然のことではない。アメリカが昨年以降、東アジアでの退勢を挽回しようと、中国周辺で発生する一連の事態に強制的に介入したことこそがその先例である。ビンラディンの死後、アメリカが10年前に進めていた「中国抑制」戦略を再開するのではないかと、現在多くの人が予想している。実際、先進国はここ数年の間、中国に対抗する2つの「武器」を放棄しようとしなかった。1つは、不況を中国など新興市場国家のせいにすること、1つは、人権問題などを糸口に中国の政治に介入すること、である。中国などBRICS国家が急成長を遂げる中、オバマは「アメリカはナンバーワンであるべき」という主張を強めている。このような危機感は、中国を含む新興国への風当たりを強めるに違いない。